「文筆家」:本の執筆はアクセンチュア転職後に始まり、その源流は子どもの頃からの読書好きから来ています。私の中で読むことと書くことはつながっているのです。単なるインプットというだけではありません。膨大な名著を読んできたからこそ、自分の文章の良しあしがわかってしまいます。ああ、ここはわかりにくい、つまらない。そしてまた書き直し……。よし、これでいこう!

「ビジネス研修」:ビジネス研修は、ずっとコンサルティング会社で社内研修をやっていたので、そこから割と自然につながっています。でもそもそもは「自分たちへの研修」から始まっています。BCGに入社直後、自分たちの基礎知識の無さと、社内教育システムの無さに危機感を持って自分たちで研修プログラムを企画して立ち上げました。社内にMBAホルダーが(先輩コンサルタント)いっぱいいたので、講師には恵まれてました。でも厳しかった~(笑)

「MBA教授」:経営コンサルタントだったら誰でもMBAの教員になれるわけではありません。ある意味「経営の素人さん向けに経営学を教える」という特殊スキルと熱意が必要です。私の場合、それ以前に若手コンサルタント向けや一般社会人向けの研修を(20代から)長くやっていたので、その経験やスキルが効いています。

最初の点の生まれ方・生み出し方

他のキャリアも同じような流れ(線)なのですが、でも最初のdot(ドット:点)はどう生まれたのでしょう。ジョブズの場合は「好きなこと」でした。大学中退後にもぐりで受講した全米最高水準の「カリグラフィー」の講義に彼は魅了され、ただ無心に学びました。それが10年後、アップルでのマッキントッシュプロジェクトで花咲きます。世界で初めて「美しいタイポグラフィ」を表示・印刷できるパソコンが生まれたのは、この授業のおかげです。

ジョブズは「あとでそのdotが線となるかどうかはわからない」「でも目の前のdotを必死でやれ」「必ずいつかつながるから」と言っています。

私の場合はちょっと違います。最初の本は「上司の命令」でしたが、大抵のdotは「少し遠い相手からの声がけ」から始まっています

ビジネス研修:大学時代の友人から「リクルートで社内研修やって」と頼まれた
子ども向け教育:娘の通う小学校の校長が保護者に「授業したい人はいるか」と呼びかけた
親向け研修:自著を読んだ人から突然依頼が来た

どれも即座にYesと返答しました。声がけの内容がなんであろうと好き嫌い言わず、とりあえずYesと答えて1回はやってみます。それが自分の幅を広げてくれるから。依頼者は私自身より、私が生きる場所や価値を知っている、かもしれないのですから。新しい領域の本を読むように、新しい経験や学びをdotとして蓄えましょう。

そうやっていろいろ引き受けていれば、また別の依頼がやってきます。「こいつは頼みやすそうだ」と。気に入ったテーマなら続ければいいでしょう。1回やってダメだったテーマなら断り、違うテーマなら引き受ける。その繰り返しです。

Connecting The Dotsはただの運任せではありません。どうせなら輝くdotをつくること、そのdotをつなげるべく努めることが必要です。

パラレルキャリアの価値とリスク

パラレルキャリアはやってみると結構役に立ちます。特に変化の時代には幅の狭い専門家より強いと言えるでしょう。

「CRM」:最初に書いた本のタイトルでもある「CRM」は、顧客に対する3つの活動(マーケティング、セールス、サービス)と顧客戦略やITツールを統合する壮大なコンセプト。それまでおのおのの専門家はいたが、全部に経験のある人はほとんどいなかった。でも私はBCG、アクセンチュアで過ごすうちに、経営戦略からITツールの導入まで、マーケティングからセールス、サービス改革まで、さまざまなプロジェクトを経験し、どれもそこそこ語れるようになっていた
「親向け講演」:私は親向け講演の超専門家ではないが、同時にMBA教授やビジネス研修もやっているので、ビジネスの本質や最先端、そこで本当に求められることについて語れる。だからこそ、親、特に働く親たちへの説得力が多少なりともある。変化の激しい時期には「狭さ」や「安定」がリスクになるよね、と

でもパラレルキャリアはちょっと怖い道です。いくつも並行でやったら、普通はどれも中途半端になって浅くなります。少しくらいの浅さは仕方ありません。でも、あまりに浅くてはdotにもならず、他とつながりません。

キャリア的にも、4キャリア・コンセプトでいうトランジットリーに落ち込むことでしょう。短期に転職を繰り返すジョブホッパー扱いされて、徐々に苦しくなります。

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