chay 一目で恋に落ちたZEMAITISのアコギ
キュートなルックスと確かな表現力を備えるシンガーソングライターのchayさん。人気女性誌『CanCam』(小学館)では、「まい」名義でモデルとして活動する。この5月に結婚を発表し、公私ともに充実するchayさんは、12年のデビュー以来初となるベスト盤『Heart Box』をリリース。アルバムのアートワークにも登場するハートが印象的なZEMAITIS(ゼマイティス)のアコースティックギターは、「chayというアーティスト」を語るうえで決して外せない楽器だという。
私の代名詞になると一目ぼれしたギター
「このギターは、デビューが決まった21歳で入手しました。サウンドホールがハート形で、その周りもハートのシェルで飾られている。ポジションマークまでハートと、ハート尽くしです。
買ったのは、確かお茶の水の楽器店だったかな? とにかく、楽器屋さんをものすごく回りました。デビューにあたり、『chayと言えばこのギターだよね』といわれるような、アイコンになるギターを探し求めていたんです。でも、これを見たときは、もう一目ぼれ。他にはないギターだと思ったし、chayの代名詞になると確信しました。
ZEMAITISはアート性と高品質を兼ね備えたギターで、多くのミュージシャンが信頼を寄せるメーカー。このハートのギターも凝った作り、デザイン性の高さに心を奪われました」
「ZEMAITISはもともとエレキギターが有名なメーカーで、日本人のミュージシャンでこの会社のアコースティックギターを使っているのは、布袋寅泰さんやコブクロの小渕健太郎さんなど、わずかだと思います。その希少性もいいなと思いました。ただ、ボディーが大きくて重いので、背負って移動するのは結構大変でしたね。
ギターを弾き始めたのは19歳から。それ以前はピアノを習っていました。子供のころから歌手になりたくて、何度もオーディションを受けましたが、いいところまで行ってもだめで悔しい思いをたくさんしました。どの審査でも、異口同音に『イメージしていた歌声と違う』と言われ、当時はそれがコンプレックスで……。ですが、だんだんと『そんなに言われてしまうなら逆手に取ろう』と思って、個性として生かそうと考え方を変えたんです。自分らしさとして『意外性』を武器にするなら、一番意外な楽器を組み合わせようと思い、ギターに挑戦することにしました」
結婚した今の気持ちを歌にしました
「私が通っていた『音楽塾ヴォイス』の先生は、とにかく厳しくて『このフレーズが弾けるまで帰さない』というような方針の方でした。練習を少しでも怠るとすぐにバレてしまうし、指摘される。ギターを始めたのも19歳と遅かったので、人の何倍も努力しなきゃいけないと思い、本気で毎日6~7時間は練習していました。
だから、大学の頃はギターを弾いていた思い出しかないほど(笑)。授業とご飯と寝る時間以外は、ギターを弾いていたんじゃないかな。指もボロボロで最初のうちはお風呂に入ると傷口に染みて痛くて。でもそれも勲章というか。女子大生らしく、かわいいネイルにも興味があったけど我慢しました。
弾けば弾くほど、ちゃんと結果が出るのも楽しくて。『絶対に無理』と思うような難しいコードも、何百回となく練習していると、突然ふと弾けるようになるんです。『不可能が可能になる瞬間がある』とギターに教えてもらった経験はいまも生きています。できないと思うようなことも、努力を重ねれば可能になるというのが活動のモットーになっています。
もう1本、『Terry's Terry(テリーズテリー)』もメインでよく弾いていますが、これはTHE ALFEEの坂崎幸之助さんからお借りしているもの。坂崎さんが何十年も大切に弾き続けてきたギターなので、本当に良すぎるくらいに音がいい。完成されているなと感じます。ギターって、きちんと弾き続けるとこんなにも音に深みが出てくるんだなと思うと、ZEMAITISのギターも楽しみ。自分とともに成長していくギターですね」
「今回、初めてベスト盤を制作したことで、ギターと共に、自分も色々なことを経験してきたんだなと感じました。応援してくださっているファンの皆さんの中には、デビュー当時はまだ学生だったのに、いつしか結婚してママになった方もいます。活動に迷ったとき、原点であるギターの弾き語りライブ『chay's room』をしたことで迷いが吹き飛んだこともありました。曲作りで、今感じていることや気持ちを大切に書いてきたので、曲を聴くと当時のことが走馬灯のようによみがえるんです。
新曲『花束』は、結婚した今の気持ちを形にしたいと思い、飾らないありのままの気持ちを込めて歌っています。新型コロナウイルスのステイホーム期間中につくった『永遠の針』もまた、ウエディングを意識したバラードになっています。時間に余裕が生まれたからこそ、ゆっくり作曲に向き合うことができました」
いつか便利グッズを考案してみたい
「ステイホーム期間は、ギターに助けられました。少しでも元気を届けられたらと思ったし、人に会えないなかでも発信するにはどうしようかと考え、弾き語りでインスタライブをすることにしたんです。ひとりで自宅から歌を届けるのに、ギターはこれ以上ない相棒でしたね。
インスタライブでは自分の曲のほかに、ファンの方からのリクエストに応えてカバーも披露しました。今まであまりやったことがなかったけど、あいみょんさんやOfficial髭男dismさんなど、J-POPのヒット曲をたくさん歌いました。カバーする前は曲を聴きこんで、譜面に起こすので、すごく勉強になりましたね。
コロナ禍で歌を届けられない経験から、ますます歌い続けることのありがたさを痛感しました。デビュー当時は、この番組に出たいとか、武道館でライブをしたいといった具体的な目標があり、今もそれは持ち続けています。でも、この先10年、15年と歌い続けられることもとても大切だし、歌い続ける大変さも改めて感じています。
今、欲しいものですか? 気ままなひとり暮らしではなくなったので、『便利グッズ』にすごく興味があります。買ってよかったと思ったのは、MARNA(マーナ)という生活雑貨メーカーのエコバッグ『Shupatto(シュパット)』。普段持ち歩くバッグは小さいのですが、そこにぽんと入れておけるサイズ。帰りがけにスーパーで買い物するときなどにすごく便利で、周りの人にもめちゃめちゃ勧めています。
もう一つは、やはりMARNAの『調味料ポット』。一見普通の塩、砂糖入れですが、取っ手を押してふたを開けるときに、自分側に開くんです。このちょっとした工夫が、すごくありがたくて。すり切りができる弁がついているところも、気に入っています。
ちょっとしたアイデアで、ラクになったり楽しくなったりするところが便利グッズの魅力ですよね。これまでファッションアイテムはいくつもコラボさせていただいて作ってきましたが、実はアイデアグッズを考えるのも好き。いつか自分で、とんでもない便利グッズを考案してみたいです」
1990年10月23日生まれ、東京都出身。12年10月、『はじめての気持ち』でCDデビュー。13年10月~14年4月に出演したフジテレビ『テラスハウス』で脚光を浴び、同年5月より女性誌『CanCam』専属モデルとなる。15年の10thシングル『あなたに恋をしてみました』がドラマ主題歌となり、50万ダウンロードのヒットに。16年から開始した弾き語りライブ「chay's room」では、アコースティックギターのほかウクレレやバンジョーも弾きこなす。19年、映画『ダンスウィズミー』に出演。20年10月に初のベスト盤『Heart Box』をリリース
『Heart Box』
ヒット曲 『あなたに恋をしてみました』など既発シングルをはじめ、リアレンジをした楽曲やデビュー前からライブの人気定番曲となっている『Together』も初収録。新録のラブソング『花束』『永遠の針』含む全16曲を収録。
(文 橘川有子、写真 藤本和史)
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