筆記距離が2倍に アスクルのホワイトボードマーカー

日経クロストレンド

アスクルの「ホワイトボードマーカーインク容量2倍」。2019年のリニューアル後は、筆記距離2倍をうたえるようになった。1本当たり税込み63.4~71.5円(通常価格、セット本数により変わる)
アスクルの「ホワイトボードマーカーインク容量2倍」。2019年のリニューアル後は、筆記距離2倍をうたえるようになった。1本当たり税込み63.4~71.5円(通常価格、セット本数により変わる)
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塾や学校での授業の他、企業の会議シーンなどで用いられているホワイトボードマーカー。アスクルのロングセラー商品として安定した販売を続けてきた。そんな中、2016年にスタンダードタイプのインク容量を2倍に増やした新商品を投入した。しかし、ユーザーから想定していたような評価が得られず、販売も苦戦。そこで19年2月に、同社の文具としては早いサイクルでのリニューアルに踏み切った。

リニューアル後の同商品は、スタンダードタイプに比べてインクを増やしている点では16年モデルと同じだが、「筆記距離2倍」をうたっていることが最大の特徴だ。コロナ禍を契機にテレワークや遠隔授業が広がり、現場での需要面では逆風が吹いたものの、20年8月の売り上げは前年同期比170%を超えるなど、リニューアル後は堅調に推移している。

「インク容量2倍」でニーズを捉えたはずが……

そもそも16年に発売した「インク容量2倍」の大容量モデルは、定期的に行っているユーザーニーズや不満の調査から生まれた。

アスクルでは、商品がどの業種で使われているのかといったデータを継続的にチェックしている。その際、ホワイトボードマーカーは、塾などの教育現場での使用が全体の約25%に上り、圧倒的に多いことが分かった。そこで実際に教育現場に出向き、困りごとを中心とした聞き取り調査を実施。結果、浮かび上がったのが、「もっと長く書けるものが欲しい」「すぐにインクが切れてしまう」といった、「インクの持ち」に関する不満の多さだ。ここから着想を得たのが、1本で長く書けることを目指し、インク容量を2倍に増やした新商品だ。

ホワイトボードマーカーは、筆記具全体に比べて「教育」関係の購入者の割合が多い

ニーズをつかんだかに見えた大容量モデルだが、販売は順調とはいえなかった。「インクが薄い」「かすれる」といった不満の声が散見され、商品の返品も比較的高い水準にあった。そこでリニューアルを模索することになる。だが、通常なら毎日のように使用する商品のリニューアルは慎重に行うのが定石だ。

というのも、「毎日使っているものこそ、お客様は使用感に敏感。少しの変化によって、さらにファンになってもらえる場合もあれば、離反につながる可能性もある」と開発を担当したアスクルマーチャンダイジング本部の及川雅也氏は指摘する。そのため、リニューアルといえども、デザインを微調整したり、使用感に影響が出ない範囲での小さな改良にとどめたりするケースが多い。しかし、それではユーザーが抱えている不満の解消にはつながらないと判断し、早期のリニューアルを決断した。

ウェブアンケートの声から見つけた突破口

リニューアルに当たり、「ホワイトボードマーカーでのお困りごと」について改めてユーザーにウェブアンケートを実施し、課題を洗い出した。特徴的だったのが、ユーザー全体と最も利用者が多い教育現場とでは、不満点として上位に来る項目が異なっていた点だ。どちらも不満点の1位は「消去性の高いもの」だったが、教育現場のみ「筆記距離が長いものが欲しい」という声が20%と突出していた。「メインのユーザー層である教育現場の声を突き詰めれば、他業種にも響くものがつくれるのではないか」(及川氏)と考え、リニューアルの最重要項目は「筆記距離」に決まった。

旧モデルはインク容量を2倍にアップしたものの、筆記距離に関しては具体的に公開していなかった。新モデルでは長く使えるとユーザーが実感できる品質へと改良することが必要だった。「筆記距離を伸ばすだけであれば、ペン先を細くしてインクを出す量を抑えればいい。しかし、持ち手やペン先の太さを変更すると、使用感が変わって使いづらいと感じるユーザーが増える可能性がある」(マーチャンダイジング本部の山科治氏)。そのため、なるべく使用感は変えずに、機能性を高めることに注力。ペン先の太さや材質などの改良を重ね、計測試験も繰り返し、「筆記距離2倍」をうたえる品質に高めた。

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