日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/11/7

混雑する宇宙空間

地球を取り巻く宇宙空間は、ますます混雑してきている。現在、地球を周回している10センチ以上の人工物は2万9000個以上もあると考えられており、衝突の危険性はこれまで以上に高まっている。

より多くの、より良いインターネットアクセスへの需要が高まるにつれ、人工衛星の数はどんどん増えている。例えば、民間企業スペースXは、地球低軌道に数百機の通信衛星「スターリンク」を打ち上げていて、さらに数千機の打ち上げを計画している。

宇宙での衝突事故としてこれまでで最悪のものは、2009年2月に発生した。運用中の米国の通信衛星イリジウム33と、ロシアの軍事衛星コスモス2251がシベリア上空で衝突したのだ。衝突の結果、約1800個の宇宙ゴミが放出され、現在も追跡調査が続けられているが、この衝突により地球低軌道上の宇宙ゴミの総量は約10%増加したとマクダウェル氏は言う。

「安全に関する懸念を払拭してくれるような交通ルールが宇宙にはありません」と、米テキサス大学オースティン校の軌道力学研究者で、クラウドソースによる宇宙交通監視システム「ASTRIAGraph」を開発したモリバ・ジャー氏は言う。衝突を回避するためのより良いシステムを開発しないかぎり、増えていく宇宙ゴミによって地球周回軌道を利用できなくなる可能性がある。「対策をとらなければ、そうなってしまいます」

これまでのところ、宇宙ゴミの軌道に関するデータのほとんどは米軍から得られている。米国宇宙軍の一部である宇宙監視ネットワークは、地球全体に分布する望遠鏡のネットワークを使って、グレープフルーツより大きい宇宙ゴミのすべてを追跡している。しかし近年、商業目的での地球低軌道の利用が増加しているため、レオラブズのような民間企業だけでなく、米国商務省の宇宙商務局も、宇宙ゴミの追跡において大きな役割を果たすべく準備をしている。

米国の軍事レーダー施設のほとんどは、冷戦時代に「北極点を越えてくるミサイルを探すため」に建設されたと、セパリー氏は指摘する。同氏によると、レオラブズが米国のアラスカ、テキサスに加えニュージーランドに追跡ステーションを開設するまでは、南半球の空の監視はほとんど行われていなかったという。

米航空宇宙局(NASA)は1979年に、宇宙ゴミを追跡する軌道デブリプログラムを設立したが、これはNASAが打ち上げた人工物を追跡するだけで、ほかの人工物は追跡していない。一方、米国防総省は人工衛星が衝突の危険にさらされていることを検知した場合、NASAだけでなく世界中の企業や国に事前警告を行っている。

宇宙に打ち上げられる衛星の数が増えるほど、ニアミスや衝突が増えることは避けられないとセパリー氏は言う。「実際、ニアミスや衝突は起きていて、その頻度は高くなっています。どのように対処するべきか、真剣に考えなければなりません」

(文 DAN FALK、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年10月20日付]