
地球のまわりを周回している小型車ほどの重さを持つ2つの宇宙ゴミが、地球の上空約990キロでニアミスした。両者の距離は25メートル未満だったと推定されており、もし衝突していれば、小さな破片が無数にできて、数十年にわたって他の人工衛星や宇宙船を危険にさらすおそれがあった。専門家たちはその確率を5~10%と見積もっていた。
今回ニアミスした物体の1つは、1989年に打ち上げられたロシアの航法衛星(船舶や航空機に位置を知らせ航行を助けるための人工衛星)。もう1つは2009年に打ち上げられた中国のロケットの3段目、つまり1段目、2段目を切り離した後、衛星を軌道に投入する部分である。
地球低軌道(高度2000キロ以下)の物体を追跡している米カリフォルニア州にあるレオラブズの事前予想では、日本時間で2020年10月15日午前9時56分、南極大陸沖の南大西洋の上空で、わずか12メートルのところをすれ違うとされていた。同社によると、2つの物体の合計質量は約2800キロで、相対速度は秒速14.7キロであるという。
ISSに危険は?
この2つは、宇宙ゴミとしては非常に大きい。ロケットの3段目の長さは約8メートルもある。人工衛星自体の長さは約5メートルだが、衛星を安定させるために長さ約17メートルのアームが突き出している。
レオラブズの最高経営責任者であるダニエル・セパリー氏は、両者が正面衝突した場合、粉々になって破片が「地球を包み込むように広がっていく」と言う。また、飛び散った破片は、いつの日か高度が下がってきて大気中で燃え尽きるまで「何百年も上空にとどまる」ことになる。
正面衝突ではなく、衛星のアーム部分だけがロケットと衝突する可能性もあった。米マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者ジョナサン・マクダウェル氏は、このような衝突の結果を予測するのは難しいと言う。
それでもマクダウェル氏は「地球への脅威はありません」と言う。「破片は小さく、大気中で完全に燃え尽きるでしょう。いずれにせよ、ほとんどの破片は何十年も落ちてこないでしょうし、落ちてくるときには完全に燃え尽きるでしょう」
当面は国際宇宙ステーション(ISS)への危険もなさそうだ。ISSは、破片が生じる可能性がある高度よりもかなり下の、高度約400キロのところを周回している。マクダウェル氏は「短期的にはISSに大きな危険が及ぶ心配はないでしょう」と言うが、長期的には破片の高度が下がってきてISSの軌道上にくる可能性がある。「そうなれば、ISSに降り注ぐ『雨』の量も増えるでしょう」
ISSは、今年に入ってからすでに3回、近づいてくる宇宙ゴミを避けるための軌道変更マヌーバを行っていて、最近では9月下旬に実施している。