2020/11/6

誰を優先するか、4つの段階

新型コロナウイルスは感染しやすいため、優先的にワクチン接種を受けられる人を当局が決定するにあたっては、「グループホームに集まって生活している」「感染しやすい環境で働いている」などの社会的基準を考慮する必要がある。

報告書ではまず、感染リスクが高いヘルスワーカーに加えて、バスの運転手、食料品店の店員など、社会を動かす上で必要不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーに接種する重要性が強調されている。

第2段階の対象者は、65歳以上の高齢者、幼稚園から高校までの教師、学校職員、保育士のほか、食肉加工場などソーシャルディスタンス(社会的距離)をとれない環境で働く労働者、グループホームやホームレスシェルターの居住者や職員、刑務所や拘置所の収容者や職員などだ。

子ども、30歳未満の成人、その他のリスクの高いエッセンシャルワーカーは、第3段階の対象者となる。第4段階は、その他米国に居住するすべての人だ。

報告書は今後、「予防接種の実施に関する諮問委員会 (ACIP)」によって検討される。CDCに対して認可ワクチンの使用に関する公共政策の勧告を行う非政府組織だ。その提言に拘束力はないものの、基本的には採用される。また、州や郡の実情に合わせて柔軟に実践できる余地を残した提言となる。

どうするのが公平か

ACIPのホセ・ロメロ委員長によると、ACIPと全米医学アカデミーは健康の平等を促進するという使命において「一致」しているものの、ACIPが最終的な指針を出すのは、どのワクチンが承認されるかが明らかになってからだという。

「私たちの提言は、新しいワクチンが出て、その効果を見極めるたびに変わるかもしれません」とロメロ氏は言う。「例えば、高齢者にはあまり効果がないとわかったら、若者に優先的に接種することになるでしょう」

公平さを考慮して、医療資源を振り分ける優先順位が決められた例は、今回のパンデミックですでに存在する。

6月にレムデシビル(トランプ大統領にも最近投与された臨床試験段階の抗ウイルス薬)の供給が不足したとき、米ピッツバーグ大学医療センターは、この薬を投与する患者を決める際に重みを付けた抽選を行った。レムデシビルは患者4人につき1人分しかなかったが、恵まれない背景を持つ患者は3人に1人の確率で当選するようにしたのだ。感染リスクの高い仕事をしている医療従事者やエッセンシャルワーカーも同様の扱いにした。

その際、患者の年齢、人種、民族、障害、支払い能力、世話を必要とする子どもの有無などは考慮せず、代わりに「地理的はく奪指数(地域の社会経済状況の指標)」という尺度を用いた。これは米ウィスコンシン大学が開発したデータベースに示されており、所得、教育、住居など十数種類の変数が組み込まれている。

「貧困や医療へのアクセスの悪さ、失業など、旧来からの不利益により死亡リスクが高い人がいるなら、私たちは、そうした不利益を軽減するために手段を講じます」とダグラス・ホワイト氏は説明する。氏はピッツバーグ大学で救命救急医療における倫理と意思決定に関する研究プログラムを率いる。この投与モデルは今後、回復期血漿(けっしょう)やモノクローナル抗体などが不足した際にも利用されるかもしれないと氏は話す。

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