料理の腕が上がる 台所番長が選ぶ男の重量級包丁4選
合羽橋の台所番長が料理道具を徹底比較
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、数ある包丁の中でも、切れ味が良く、男の料理の腕を上げる重量級の包丁を紹介する。(価格はすべて税別)
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こんにちは、飯田結太です。料理をするために、まず必要なものが包丁です。包丁の進化はめざましく、最近では使いやすさや軽量化にこだわったものが多数出ています。しかし、男性や手が大きな人からすると、今どきの包丁は小さすぎる、軽すぎて手ごたえがないと思うかもしれません。料理にこだわるなら、包丁もこだわりたいもの。そこで、今回は手が大きな人や男性でもしっかり使える、刃渡りが長めで重量級の本格派、しかも、見目麗しい包丁を取り上げます。
スパッと切れる、日本限定「グローバル・イスト」
日本発ながら、海外で絶大な人気を誇り、逆輸入のように日本でブームとなった包丁、グローバル。グローバルの包丁の特徴は、握り部分までステンレスの一体成型。衛生的なことはもちろん、握りやすく、置いておくだけでもかっこいいことから、男性にとても人気があります。グローバル・イストはそれらのグローバルらしい特徴を生かしつつ、日本人が昔からなじんできた刃幅が広い和包丁の良さを加え、用途別に6種類の包丁を厳選した日本限定のシリーズ。家庭料理にもっとこだわりたいという人に使われている本格派です。
グローバル・イストシリーズでまず手に取りたいのが、刃渡り19センチの万能タイプです。日本人が一番なじみのある三徳包丁と、世界でなじみが深い牛刀、ふたつの包丁の良い部分を持つのが、この包丁。牛刀ならではの刃先のするどいエキストラエッジに、三徳包丁特有の刃幅の広さを加えました。肉の塊をはじめ、野菜や魚でもスパッと切れるので、これ一本あれば十分。
ドイツの有名料理人とコラボ、美しくて実用的
プロの世界では、包丁の価値は硬さ、靭性(じんせい=粘り強さ)、耐食性(さびにくさ)、耐摩耗性(削れにくさ)の4つの指標のバランスで決められます。硬くて摩耗しにくくても、粘りがないとすぐ折れてしまう。反対に粘りが強くても、軟らかいと切れ味が悪い。このように、どれか一つが際立っていても、包丁としては使いづらく、長持ちしません。
貝印の「旬」シリーズは、刃物の町として知られる岐阜県関市の職人が手掛ける本格派で、その4つのバランスが絶妙。旬シリーズの中でも、料理にこだわる人に持ってもらいたいのが、ドイツの人気料理人、Tim Malzer(ティム・メルツァー)とコラボしてつくられたこの包丁です。
刃は、高い硬度と靭性を併せ持つVG-MAXダマスカス材。プロ仕様の刃物に使われる材質です。そこにでこぼこのつち目加工を施すことで、美しさはもちろん、食材がくっつきにくく、スムーズに切れるようにしたもの。ハンドルは、積層強化木で、ずっしりとした軟らかな握り心地があります。
「旬 Tim Malzer」のシェフズナイフ(牛刀)は、刃渡りが20センチもあり、シリーズの中でも、肉の塊をスパッと切れる重量級の包丁。ずっしりと重いのに、刃がとても薄く切れ味が軽いので、私も気に入っています。
家庭料理を極めたい人のための包丁「和 NAGOMI」
刃物の町、岐阜県関市で140年以上の歴史を持つ刃物メーカー・三星刃物が作った、切れ味が続き、メンテナンスも簡単、主婦からプロまで使っている包丁「和 NAGOMI」。手入れがしやすく、切れ味が長く続く包丁が必要という社長の奥様の考えから、社長と二人で開発したシリーズです。
とにかくハンドルの握り心地に驚きました。プロが包丁を選ぶときに、4つの指標の次に重視するのが、ハンドルの握り心地なんです。1日中使う包丁ですから、ずっと握っていても疲れないことが大切。私が500本以上の包丁を試してきた中で、一番握りやすかったのがこれでした。握りやすさについてうかがったら、ハンドルにこだわり過ぎて、製作してくれるところがなくなってしまい、自社でハンドルの生産ラインを作ったそうです。
和シリーズの牛刀は、刃渡りが20.5センチもある本格派で、握り心地だけではなく、切れ味のバランスも抜群。さびにくく、靭性が強くて硬い440Aモリブデン鋼を採用しているので、切れ味が長続きします。さらに日常使いなら、月に1~2回、新聞紙で数回研ぐだけで、切れ味が長持ちするんです。料理にこだわりたい人でも、プロのように毎日使い終わった後に研ぐのは大変です。和シリーズは、家庭で使うことを前提にしているので、メンテナンスを極力簡単にしているのがうれしいですね。
男のための包丁「エレガンシア」
「男の料理」をテーマに作られた、サンクラフト「エレガンシア」。まさに男性のために作られたようなデザインと大きさに驚きました。手の大きな人、男性が使いやすいように刃幅を広く設計し、力を入れやすいように、ハンドルにカーブを付けています。刃の材質は、最高級のステンレス鋼、SG2粉末鋼。摩耗性に優れ、切れ味が長く続きます。
硬度は高く、鉛筆に例えるなら、一般的な包丁がBだとしたら、エレガンシアは6Hくらいの硬さがあります。1本ずつ職人の手によって作られているので靭性も高く、経年変化も楽しめるようにハンドルはウオールナット合板で、口金には真ちゅうを施すなど、こだわりがすごい。刃の先端も極薄で、摩耗しにくく、長く使えるようになっています。
料理にこだわりたい人におすすめしたいのは、ずっしりと重く、切れ味が続き、刃渡りが長くて薄い包丁。肉の塊も魚もスパッと切れて、トマトや豆腐のような軟らかい食材も美しい断面になる包丁は、料理を極めたい男性にこそ、持っていただきたい。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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