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劇作家・演出家 野田秀樹氏

劇作家・演出家 野田秀樹氏

劇作家、演出家の野田秀樹さんは長年、演劇界最前線で活躍してきた。東京大学在学中に立ち上げた劇団で若手の旗手として注目され、海外公演や歌舞伎とのコラボレーションなど、活動の幅を広げてきた。野田さんは自身を「リーダーと言うより、方向を示すダイレクター」だと分析する。そして「人のやり方をまねしたり、盗んだりすることで学んできた」と、常に成長に結びつける姿勢の大切さを語る。

(下)言い出しっぺがリーダーに 責任職が嫌、コロナで転換 >>

――自分はどのようなリーダーだと思いますか。

「こういう職業なので、リーダーだとか、あまり考えていないですね。でも、演出家として稽古場を仕切らなくてはいけないので、リーダーと言うよりダイレクター(director)、方向を示す人間というのかな」

「英国のロンドンで20年くらい前に芝居をしたときです。食事から稽古場へと帰る途中、俳優としゃべりながら歩いているうちに、『あれ方向、違わない?』となりました。2人とも方向音痴だったんです。『ダイレクター(演出家)なのに方向感覚が間違ってる(wrong direction=ロング・ダイレクション)』と盛り上がって、稽古場でもそう呼ばれました」

「演出の仕事というのは、自分が面白くないと感じたときに、『何か舞台上に嘘があるな』と見つけることなんです。昨日まですごくいいシーンだったのが、突然嘘っぽく見えるときもあります。そうしたところを見抜いて拾っていくのが、演出の一番大事なところだと思います」

――嘘っぽく見える、というのは。

「演技がその役者のものになっていないのに、たまたま面白いと言われたからやり続けている、という場合などです。そういうときは全部最初からやり直します。単純にセリフの問題のときもあります。舞台では、声の圧力でリアリティーがすごく変わってきます。長期公演で疲労がたまっていたら思い切って休みにしたりするときもあります」

「疲れる」は「憑かれる」

「この『疲れる』という言葉は、演劇では憑依(ひょうい)の『憑(つ)かれる』に通じます。疲労感というのは実は取りつかれるに変わることがあるんですね。疲れているはずだけど、スコーンと抜けていくというか。でも、役者にいきなり『憑依しろ』なんて無理なので、遊びから入ることが多いですね。遊んで動いて、激しい鬼ごっこをやったりしてから、稽古に入ったります」

「20歳代のころから動いて芝居するのが好きだったからでしょう。よそではフィジカル(身体的)な稽古はどうやっているかなと、こっそりのぞかせてもらって盗んできたりしていました。僕は劇団の研究生になったことがなくて、ちゃんと演劇を学んでいないので、そういう剽窃(ひょうせつ)というか、盗むところからやっています」

――技術や姿勢を見て「盗む」というのは仕事にも通じそうです。

「演劇だけじゃなくて、絵画など芸術表現の基本じゃないですかね。演劇も、能を大成した世阿弥の言う『ものまね』のように、まねることから学びが始まるんだと思います」

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