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JR東日本・総武本線の八日市場駅から徒歩約5分の場所にある「麺屋いとう」

●麺屋いとう【千葉県:八日市場】

牧歌的な九十九里の地に革命が勃発。うま味と甘みの競演で味覚を酔わせる絶品塩! 

次にご紹介するのは、8月15日に千葉県匝瑳(そうさ)市内にオープンした『麺屋いとう』だ。同店のロケーションは、『嶋』とは打って変わって、のどかな場所にある。最寄り駅からの距離は、『嶋』と同じく徒歩約5分だが、こちらはJR東日本総武本線の八日市場駅。千葉県の九十九里エリアに位置する、1日当たり乗降客1800人程度の小さな駅だ。

同店の店主・伊東正義氏も、都内の実力店で研さんを重ねたすご腕。同氏の修業先である『麺屋一燈』『煮干しつけ麺 宮元』と言えば、いずれも、都内を代表する錚々(そうそう)たる実力店。両店で6年間にわたりラーメン作りの要諦を習得し、満を持して店主の地元・匝瑳市へと凱旋した。

塩ダレを加え、香り高い親鶏の鶏油を合わせた麺屋いとうの「芳醇鶏そば塩」

同店が提供するラーメンは、「最先端を走る実力店で培った技術で、お世話になった地元の方々へと恩返しがしたい」と、食べ手を選ばない淡麗系(「芳醇鶏そば醤油」「芳醇鶏そば塩」「煮干しそば」)が中心。修業先で提供されているラーメンとはジャンルが異なる一杯で勝負を挑む。

中でも、特にオススメが「芳醇鶏そば塩」。出汁は、千葉県産の『水郷赤鶏』と『錦爽どり』のガラと丸鶏のみから採る、いわゆる「水鶏(みずどり)系」。それに、干しシイタケと昆布の滋養味をしっとりと溶け込ませた塩ダレを加え、香り高い親鶏の鶏油を合わせた、比較的シンプルな構成のスープだが、口の中で膨らむうま味、広がる甘みの分厚さが尋常ではない。鶏と乾物のうま味成分が完璧にバランスしてこそ、実現可能な珠玉の味わいだ。

スープに用いる素材は地元・千葉県産のものにこだわる

「大したことはしていませんよ。ただ、地元である千葉県に貢献したいので、スープに用いる素材は、千葉県産ものが中心です」と笑う。

このスープに合わせる麺は、都内を代表する名門製麺所のひとつ『三河屋製麺』のストレート。ツルンと滑らかなのど越しが、心地良い食べ口を約束する。

「匝瑳は、こういうタイプの淡麗ラーメンになじみが薄い地域なので、オープン当初は不安もありましたが、最近では、足しげく通ってくれる方々が徐々に増えてきました。受け入れられてきたなぁという実感があります」と店主。

私にしてみれば、そんな店主の言葉は謙遜にしか聞こえない。舌上で際限なく広がる上質な甘みが、食べ手に鮮烈な印象を刻む1杯。『麺屋いとう』が、遠からぬ内に、九十九里エリアはおろか、千葉県を代表する人気店へと成長を遂げるのは間違いない。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。
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