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オーストラリア・タスマニアでの「ふなぐち」イベント

レストランで商品説明をすると、シェフらは一様に怪訝(けげん)な顔をした。「ホワイトアスパラガスだって瓶入りなのに、なぜ缶なのか」。現地で日本酒といえば圧倒的に瓶入りが主流。缶入りや紙パック入りのワインも出回ってはいたが、それらはもっぱら小売店で家庭用に販売されていた。缶に対するイメージがわきにくかったのだ。

「ふなぐち」は酵素が生きたままの生酒なので、味わいが変化しやすい。酒が劣化する2大要因は空気(酸素)と光(紫外線)。だからこの2つの排除を徹底した。通常200ミリリットル入り缶の場合、180ミリリットルほど中身を入れるのが一般的だが、同社は酒で満タンにした。空気が入る余地を減らし、酸化しにくくするためにだ。

缶の蓋を開けると、なみなみと酒が入っており、居酒屋などで提供している“こぼれ日本酒”に似ていることで、お客の人気を博した。缶にしたことで光(紫外線)も遮断し、生酒ならではの本来の味わいを実現した。「つまり品質安定のためにあえて缶入りにしたということか」。高澤氏の説明を聞いて、シェフらはようやく合点がいったようだ。すると、すかさず高澤氏は「Yes! we can!」と応じた。当時のオバマ大統領のフレーズのcanに缶を引っかけ、笑いを誘い、商談成立といったケースも少なくない、と笑顔で明かす。

「ふなぐち」の缶を模した紙風船で店内を装飾した米国のすし店

とはいえ、生酒なので、遅くとも6カ月以内には消費してもらうように、と現地の流通関係者に要請するのを忘れない。6カ月たってから飲んでも品質には影響はないが、熟成によって味わいが多少変化する。違うおいしさに出会えるのも生酒ならでは、という教育の浸透に腐心する。

「ふなぐち」はアルコール度数も19度と強い(一般的には原酒を水で薄めて、アルコール度数を15~16%くらいに調整する)。「日本では味が濃すぎて苦手というお客様もいらっしゃいます。どちらかと言うと個性的な、ニッチな商品といってもいいでしょう。でも米国ではアルコールに強い方も多く、普段食べている濃厚な料理にも合わせやすい、と国内以上に『ふなぐち』は、実は人気なのです」と高澤氏。

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