来月、米国で大統領選挙が実施されるが、4年前の前回の大統領選挙で、米国メディアのほとんどが、ヒラリー・クリントン候補の勝利を予測したが大外れし、メディアへの信頼が大きく揺らいだ。メディアが民主党応援団(反トランプ)と化してしまったことがその主原因なのだが、メディア企業の立地の「地理的な要因」の影響も少なくないという。

リベラル系の報道ウェブサイトのポリティコは「全国メディアは非常に狭い世界に集約されている」とし、次のように書いている。
「(中略)全国メディアの拠点は海岸沿いに集中しているため、メディアは政治的な価値観に偏りがあるだけでなく、地理的にも狭い地域に集まっている。もしもあなたがジャーナリストなら、ヒラリー・クリントンを支持する地域で働いているに違いない。(中略)
 インターネット報道に携わる人たちの約90パーセントは、クリントンが勝利した地域で働いている。クリントンが30パーセント以上の大差で勝った地域で働く人が75パーセントにのぼる。新聞に関わる仕事が減っていることを加味すると、インターネット報道や新聞社の職の72パーセントは、クリントンが勝利した地域にあることになる。そういう背景を踏まえると、クリントンはまさに全国メディアがつくり上げた候補者だった」
(第1章 政治的思想が色濃く反映されるニュース 34~35ページ)

日本で「米国通」と呼ばれる知識人のなかには、ニューヨーク・タイムズやCNNの報道を根拠に持論を展開する人も少なくない。そうした人々の主張をうのみにしないように注意を払いつつ、大統領選挙を含めた米国のニュース報道を見ていくと、これまでとは少し違う世界が見えてくるだろう。特に、トランプに対する批判的な報道に関しては、5割減くらいに薄めて味わうのがよいかもしれない。

(日経BP 沖本健二)

失われた報道の自由

著者 : マーク R. レヴィン
出版 : 日経BP
価格 : 1,870 円(税込み)