2020/10/20

もともと日本の育休制度は手厚い。企業規模にかかわらず、会社に申請すれば子供が1歳になるまで何日でも取得できる。期間中は無給になるが、国の雇用保険から最初の半年間は月給の67%が支給され、社会保険料も免除される。平均的な会社員なら実際の手取り額の8割程度は保障される。男性は女性と異なり、一定の条件下で2回に分けて取得することも可能だ。

それでも、19年度の男性の育休取得率は7.48%にとどまる。18年度から1.32ポイント上昇したものの、政府の「25年度に30%」という目標には遠く及ばない。期間も半数以上の女性が1年前後は休むのに対し、男性は2週間未満が7割を占める。

就業規則になくても男性も育休を取れることが知られていないなど、誤解は多い。企業が積極的に従業員に働きかける制度に転換させて取得率を高める狙いだ。

子供が生まれた直後に男性が取得できる新たな休業制度の議論も、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の分科会で9月に始まった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの18年度の調査によると、男性社員が育休を使わなかった理由は「収入を減らしたくなかった」が32%でトップ。男性版の産休制度は育休よりも休業中の給付金を手厚くする方向で、収入面の不安を減らす。

夫が育児にかかわる時間が長いと、妻が継続して働く割合や第2子以降が生まれる割合が高い傾向がある。少子化に歯止めをかけつつ働き手を確保するには、共働きでも子供を産み育てやすい環境をつくることが不可欠だ。

男性の育休取得を促す霞が関の取り組みは、育児と仕事の両立をどう支えるか悩む企業にヒントを与えそうだ。

雰囲気づくりが課題

働く女性の8割が育休を取るのに対し、男性の取得率は低迷が続いてきた。壁はいくつかある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、収入面での不安に加え、「職場が取得しづらい雰囲気だった」(25%)、「業務が繁忙だった」(18%)を理由に挙げる人が多い。

世界を見渡してみても、日本の育休制度は充実している。国連児童基金(ユニセフ)は19年の報告書で、「最も長い有給(相当の)休業制度を提供している」と紹介している。

新制度で収入面の不安を少しでも取り除くのは必要だが、職場の雰囲気づくりを通した既存の制度の活用がまずは求められる。令和の時代は希望する男女がともに育休を取り、復帰後も協力して育児に取り組むのが当たり前の社会にしたい。

(学頭貴子)

[日本経済新聞朝刊2020年10月19日付]