ニューノーマルで稼ぐビジネス 4のキーワードで展望『ニューノーマル時代のビジネス革命』

新型コロナウイルスの影響は大きい。飲食、旅行業界のみならず、製造、物流、医療の世界でも変化への対応が迫られている。激変するニューノーマルの時代を生き抜くビジネスとは、果たしてどのようなものなのか。

その羅針盤として編まれたのが本書『ニューノーマル時代のビジネス革命』。分析・コンサルティング企業・D4DR(東京・港)社長の藤元健太郎氏と日経クロストレンドの共著だ。

国内外の45を超える先進企業事例を、ニューノーマル時代に必要なコンセプトや事業機会で4つのキーワード別に整理し、紹介している。その4つとは「トレーサビリティー(追跡可能性)」「フレキシビリティー(柔軟性)」「ミックスドリアリティー(複合現実感)」「ダイバーシティー(多様性)」だ。

三井不動産の無人物流

トイレットペーパーの品切れやマスク不足など、今回のコロナ禍によって高まったのがトレーサビリティーの重要性だ。社会のリソースを「ID化」し、生産から在庫、流通までをきめ細かく管理する必要があると著者は指摘する。その意味で、メーカーや流通の垣根を超え、サプライチェーンを統合する「モノの統合サプライ市場」は今後の成長株と目される。

サプライチェーンの再構築は今、多くの企業の関心事である。トレーサビリティーの章で、意外なところでは三井不動産が取り上げられている。同社は物流事業の拡大に乗り出し、「フルオートメーション物流モデル」を開発している。これはコンベヤーや無人フォークリフトなど、起動速度も処理速度もメーカーも異なる複数の機器を1つのシステムにつないだもので、これにより物流倉庫の完全無人化が実現した。さらに、物流モデルのショールームには倉庫の効率化を促すICT(情報通信技術)機器を体感する場を設け、企業のニーズや課題を聞き取る。背景には物流業界の人手不足に対応するとともに、建物の床を貸すだけでなく「物流コンサルティング」ビジネスを展開していこうという意図がある。

「究極のテレワーク」を目指す

ミックスドリアリティーの章では、NTTによる「究極のテレワーク」がユニークだ。障害のある従業員が、分身ロボットを入院先などから遠隔で動かし、東京本社で接客をするというもの。ロボットはカメラやスピーカーを搭載した人型で、視線入力にも対応しており、目の動きだけで操作ができる。実際に脊髄を損傷した女性が愛知県から業務にあたったケースもあったようだ。分身ロボットがテレワークの可能性を広げ、より多様な人材とのコラボレーションを実現していくのかもしれない。

本書は他にも、全日本空輸(ANA)が仕掛ける多拠点生活サービスやオンライン接客に注力するタオルメーカーのイケウチオーガニック(愛媛県今治市)など、多彩な企業とその挑戦を取材している。ウィズコロナの時代のビジネス動向を俯瞰(ふかん)し、前向きなヒントを得られるだろう。

今回の評者=倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

ニューノーマル時代のビジネス革命

著者 : 日経クロストレンド/藤元健太郎
出版 : 日経BP
価格 : 1,760 円(税込み)

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