2020/11/2

また、これまでの新型コロナと妊娠に関する研究の多くは、中等症から重症の入院患者を対象に行われてきたのに対し、PRIORITYの参加者の95%は、米国の大半の感染者と同じく、自宅療養した人々だ。そのねらいは、この病気の典型的な経過を、妊産婦だけでなく全米のコミュニティーについて把握することにあった。

「友人や近所の人々、家族にいてもおかしくない、新型コロナに感染したけれども入院が必要なほどではない人たちが対象になっています」とジャコビー氏は言う。

長引く理由は謎のまま

今回の結果を総合的に見ると、新型コロナに感染した多くの妊産婦で症状が長引いた可能性を示唆している。だが、その明確な理由はまだわかっていない。調査チームは、影響を及ぼしている潜在的な要因の解明に取り組んでいる。そのために、PRIORITYのすべての調査結果を盛り込んだ、さらに包括的な統計をまとめる予定だ。

新型コロナの長期患者については謎のままだ。通常の軽症例のように2週間で症状が消失しない理由も、どの程度の割合で長期患者となるのかもわかっていない。今のところ、長期患者に関する研究ごとに対象グループにわずかな違いがあることが、比較を難しくしているとクロス氏は指摘する。

氏はひとつの例を挙げた。あるフランスの病院の調査では、新型コロナで軽症となった成人患者の3分の2に、発症2カ月後も症状が残っているとされた。だが米疾病対策センター(CDC)が実施した電話調査では、検査の2~3週間後まで症状が残った人はわずか35%だったという。

PRIORITYの画期的な取り組みにも限界はある。今回の論文では、年収が10万ドル(約1060万円)を超える調査対象者が41%もいることから、対象となった594人は平均的に一般国民よりも裕福で高学歴だと、米アイオワ大学カーバー医科大学院の感染症専門医ホルヘ・サリナス氏は指摘している。これは、調査対象となった妊産婦の3分の1を医療関係者が占めていることが一因だ。

中国で最初の感染者が報告されてからまだ1年もたっていないが、「新型コロナは毎週のように私たちを驚かせてきました」とサリナス氏は言う。「新型コロナの長期的な影響を、数年後、数十年後も継続的に調査する必要があります」

クロス氏は、今回の調査対象には比較的裕福な人が多いため、全米の実態よりも少し「楽観的」な結果が出た可能性があると話す。

「それでも、パンデミックが新たな段階に進みつつある現在、こうした重要な調査を実施する人々がいてくれることは幸いです」と氏は言う。「信頼できるデータがあるので、患者さんに助言したり管理上の判断をしたりする際にも迷うことが少なくなります」

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年10月11日付]

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