キリン麹レモンサワー 発酵素材使い自然なイメージに
キリンビールが10月13日に発売したRTD(Ready to Drink、栓やプルタブを開けてそのまま飲めるアルコール飲料)製品、「キリン 麹レモンサワー」はその名の通り麹(こうじ)を用いたレモンサワーだ。同社で麹を用いたRTD製品は初めて。
皮ごと搾ったレモンと麹がうまみを引き立て合うすっきりとした味わいで、これまでRTDが苦手としてきた刺し身や煮物など繊細な和食との相性がいいという。
「国菌に指定される麹菌は、古来日本の食文化を支えてきた。日本酒の原料にもなっており、日本酒のつまみにも合う。瀬戸内の塩による塩味、レモンの酸味、麹のうまみが一体となり今までにないレモンサワーを開発できた」(キリンビール)
同社のRTDでは9月15日に「自然とつくる、人に心地いいお酒」という新たなコンセプトで、カテゴリーでは高価格帯となる「キリン ベジバル」を発売。野菜や果物の素材感を前面に訴求し、人工感や体に良くないなどのネガティブなイメージを覆す高付加価値の提案に打って出た。
ベジバルの初動は上々だという。「健康感への評価や、無炭酸だからこそ手に取れたというSNSの投稿が相次いでいる。単価が高くてもしっかり購入いただけている。今後はさらにユーザー層を精査していく」(キリンビール)。9~12月の目標値だった約28万ケースの約4割をすでに9月中で達成できる見込みだ。
キリン 麹レモンサワーは高付加価値製品の第2弾。ベジバルから間髪入れずに新製品を発売する背景には、連続投入で新たなコンセプトを浸透させたい狙いがある。「来年も同じコンセプトで新たな価値を提供していきたい」(キリンビール)
飽和状態のレモンフレーバーに活路
レモンフレーバーは今やRTD市場をけん引しているほどの人気の味で、キリンビールでも20年4月に「キリン ザ・ストロング」からリニューアル発売した「麒麟特製ストロング」がヒット。同ブランドの売り上げは1~8月の累計で前年比約140%と好調、1~9月累月でも約150%になる見込みと、成長が止まらない。各社もさまざまな「レモン味」の製品を投入しているため、すでに飽和状態かと思いきや、キリンビールは解決すべき課題をクリアすることで活路を見いだした。
レモンフレーバーの市場規模は直近5年間で1.7倍に拡大したが(インテージSRI拡大推計)、「人工感」「果汁のうまみを感じない」「食事に合わない」などの未充足ニーズがあるという。
一方、同社は約10年前から麹の素材としてのポテンシャルに着目していたという。コロナ禍で健康意識が高まり、日本の伝統的な発酵食品を食べる人が増えたことで、「ユーザーに受け止めてもらえる環境が整った」。
ターゲットは既存のレモンフレーバー飲用者である40代男女に加え、ビールユーザーからの流入にも期待している。20年の年間販売目標は約38万ケース。酒税改正による第3のビールの値上がりを受け、キリンビールはRTDにいっそう注力する。
(ライター 北川聖恵)
[日経クロストレンド 2020年10月5日の記事を再構成]
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