昼寝で8分以内の寝落ちは要注意 睡眠に障害ある恐れ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/10/27
ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

睡眠と覚醒の境界を決める難しさについては、「知ってる? 睡眠と覚醒の境目、基本は30秒ルール」で取り上げた。試行錯誤の結果、現在の睡眠科学では、脳波活動を目安に30秒ごとに「睡眠」と「覚醒」を判定し、睡眠と覚醒の境界をその30秒単位の「覚醒ブロック」から「睡眠ブロック」へ移行する時刻と定義することにしたのである。

このような専門家の合意(エキスパートコンセンサス)がベストであるかどうかは別として、睡眠医療の現場には深く浸透している。例えば、先の境界基準を活用した検査法の一つに「反復睡眠潜時検査(Multiple Sleep Latency Test:MSLT)」がある。MSLTは日中の眠気の強さを客観的に判定できる検査として重宝されている。

MSLTでは、日中2時間おきに、4回または5回、脳波を測定しながら暗所で昼寝を試みてもらう。測定開始直後は覚醒していても徐々に眠気が強い脳波となり、ついには睡眠状態に入る。最初に睡眠ブロックが出現するまでにかかった時間を“睡眠潜時”と呼び、睡眠潜時が短いほど眠気が強いと判定される。眠気の強さを数値として示すことができるので、睡眠・覚醒障害の診断や臨床研究にしばしば用いられる。

下の表はある健康な成人被験者のMSLTの結果である。計5回の測定の睡眠潜時を平均すると12分であった。ちなみに、午後1時30分(13:30)スタートの検査では睡眠潜時が短いが、これは「昼食後の眠気(post-lunch dip)」と呼ばれ、皆さんもご経験があるだろう(「ランチ後の眠気 実は満腹になったからではない?」)。