おうち時間で「宅バテ髪」 3万円ドライヤーに救い
大河原克行のデータで見るファクト
高機能ヘアドライヤーの売れ行きが好調だ。
なかでも高機能ヘアドライヤーのリーダー的商品である、パナソニックの「ナノケア」シリーズは、コロナ禍の半年間で約50万台を出荷する人気ぶり。2020年9月には国内累計販売台数が1300万台に達した。
最新モデルとして、10月1日に発売された「ナノケアEH-NA0E」も実売3万円前後と決して安くはないものの、従来モデル比164%という売れ行きをみせている。独自技術で発生させる微粒子「ナノイー」に含まれる水分の量を従来の18倍に増やした「高浸透ナノイー」を放出するデバイスを搭載。髪に与えるうるおいは1.9倍となった。「ツヤやうるおい感を実感したとの声や、ヘアカラーの退色抑制効果への期待から購入する声のほか、髪を乾かすのが楽しくなりそうといった声が出ている」(パナソニック)
高機能ヘアドライヤーが人気を集めている背景には、「おうち時間」の増加がある。例年は、夏場の強い日差しでダメージを受けた「夏バテ髪」の改善に高機能ヘアドライヤーが有効とされる。だが今年は外出自粛などの動きもあり、夏バテ髪の人こそ減ったが、一方でおうち時間の増加によって発生する「宅バテ髪」の改善が課題になっているというから興味深い。
専門家からは、「夏バテ髪よりも、宅バテ髪の影響のほうが深刻」との指摘もある。パナソニックが20~40代の女性586人を対象に8月に実施した調査では、実に84.2%が「コロナ流行前に比べて、髪質が悪化した」と回答した。また、現在の髪の状態を自己採点した結果は、平均で63.6点(100点満点)となっており、いわゆる「宅バテ髪」に悩んでいる人が多いことがわかる。
ストレスや運動不足が「宅バテ髪」招く
では、宅バテ髪の原因はなんだろうか。
毛髪診断士の美香さんは、新型コロナウイルスの影響による環境変化を背景にした精神的ストレスの増加や外出制限による運動量の低下に加えて、美容室の利用頻度が低下したことも原因になっていると指摘する。「ストレスや運動不足で頭皮の血行が悪化し、新生毛が栄養不足になることが宅バテ髪の原因の一つです」
「夏バテ髪は紫外線によるダメージが目立ちますが、宅バテ髪では髪のぱさつきやうねり、抜け毛や白髪といったことが多くみられます」と美香さん。これは精神的ストレスや運動不足が影響している部分だ。
また、自宅にいる時間が増えたことで、ヘアカラーを楽しむ人が増えているが、これも宅バテ髪につながっているという。「自宅で行うセルフカラーは、適切な環境が保てず髪にダメージを与えてしまう場合があります。20~40代の女性のヘアカラー経験者は約85%に達しており、男性にも人気ですが、色落ちや傷み、枝毛といったヘアカラーの悩みを持つ人も少なくありません。セルフカラーを正しく行えていないことが、宅バテ髪の原因になっています」(美香さん)
パナソニックが20~40代の女性1578人を対象に6月に実施した別の調査によると、ヘアカラーの3大ストレスは、「色落ち」(現在ヘアカラーを施している回答者846人の76.5%が選択、以下同)、「全体的な傷み」(71.2%)、「毛先の傷み・枝毛」(63.4%)であり、ヘアカラーを十分楽しめない人が多いことがわかる。
前述のように外出自粛などによって、美容室の利用頻度が低下していることも髪にはマイナス要素である。定期的に美容院を訪れることができず、髪をケアし、健康にする機会が減ってしまうからだ。
「使えば使うほど髪が元気」
美香さんによると、宅バテ髪のケアに大切なのは、髪の表面を覆っているキューティクルの密着性を高めることであり、そのための髪のケアを毎日習慣づけることが重要だとする。「例えば、ヘアカラーをすると、髪表面のキューティクルをこじあけるような状態になります。キューティクルの密着性を高めればヘアカラーをした髪のダメージを抑えることができます。ヘアカラー薬剤の流出を防ぎ、退色を抑制するメリットもあります」という。毛髪内部にミネラルイオンを届けることで、キューティクルの密着性を向上させ、髪の質を向上させることができるわけだ。
実は、パナソニックの高浸透ナノイーは、家庭用ヘアドライヤー販売で80年以上の歴史を持つ同社が、6年がかりで開発したデバイスによって実現されている。昨年発売のモデルから搭載されており、同社は「使えば使うほど髪が元気になる」と自信をみせる。
ヘアドライヤーは、「乾かす」というもともとの役割が、大風量化によって「より早く乾かす」方向に進化した。さらに最近は、高浸透ナノイーなどの機能により「髪を美しくする」機器へと進化している。この方向性はパナソニック以外の大手家電メーカーでも同様だ。
例えば、シャープがイオンを発生させる独自技術「プラズマクラスター」を搭載した高機能ヘアドライヤーを発売している。プラズマクラスターによる水分子コートで、キューティクルを引き締め、髪のうるおい感を持続できるという。こちらも最新モデルの実売価格は2万円前後といったところだ。
夏バテ髪は季節要因が大きいが、宅バテ髪は今後、年間を通じて注意しなければならないものになりそうだ。宅バテ髪の解消に向けて、高機能ヘアドライヤーの導入を検討してみてはいかがだろうか。
ジャーナリスト。30年以上にわたって、IT・家電、エレクトロニクス業界を取材。ウェブ媒体やビジネス誌などで数多くの連載を持つほか、電機業界に関する著書も多数ある。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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