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ノーベル化学賞のダウドナ氏 自身の強みは執着心

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ナショナルジオグラフィック日本版

エマニュエル・シャルパンティエ氏とともにゲノム編集技術を開発し、2020年のノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナ氏。 この記事では書籍『Women ここにいる私』(日経ナショナル ジオグラフィック社刊)に掲載された、ダウドナ氏へのインタビューを紹介する。聞き手はナショナル ジオグラフィック英語版のスーザン・ゴールドバーグ編集長。

◇    ◇    ◇

ジェニファー・ダウドナ氏は小学6年生のとき、DNA研究の先駆者ジェームズ・ワトソンの著書『二重らせん』を父親から贈られ、その面白さに取りつかれた。カリフォルニアの小さな大学で生化学を修めたあと、本人いわく「驚いたことに」、ハーバード大学の大学院に入学を許可される。ここでダウドナ氏は、かねて強い興味を抱いていたRNAの先駆的な研究に取り組んだ。

彼女が何年もかけて調査したのは、珍しい塩基配列を持つ「CRISPR(クリスパー)」というたんぱく質と、その機能である。ダウドナ氏は2011年、微生物学者のエマニュエル・シャルパンティエ氏を共同研究者に迎え、翌年にCRISPRに関する画期的な発見を公表した。CRISPRをCas9(キャス9)酵素と組み合わせると、極めて高い精度でDNAを切断できることを突き止めたのだ。

この遺伝子編集技術は、過去1世紀においてもっとも偉大な科学的ブレークスルーとの呼び声も高い。ダウドナ氏は現在、カリフォルニア大学バークレー校の教授として研究を続け、遺伝子操作技術の倫理的な活用を提唱している。

――早速質問を始めさせてください。ご自身をフェミニストだとお考えですか?

「良い質問ですね。いうなれば、私は駆け出しのフェミニストです。理由を説明しましょう。キャリアの最初のうち、私は『女性科学者』として振る舞うことをできる限り避けていました。性別に関係なく1人の科学者として、仕事熱心な研究者として認められたいと願っていましたし、性別に基づくいかなる利益も不利益も受けたくはなかったからです」

「同様の理由で、特定のグループと同一視されることを嫌う人は少なくありません。彼らが望むのは個人としての評価、功績に基づく評価であり、自分では変えられない出生時の条件によって特別に配慮されたいとは思っていないのです」

「少なくとも40代を通して、私はそう考えていました。しかしここ10年ほど自分をよく観察し、これが一種の偏見であることに気がつきました。意図的ではなかったにせよ、私は女性に偏見を持っていたのです」

「以来、私は柔軟な心で女性を理解することの大切さを学んでいます。女性が直面する課題や、国内外のメディアにおける女性の取り上げられ方、文化による女性像の違い、その一例である職業的役割の違いなど、多くのことを知りました。こうした課題については、今後も議論を続けていく必要があります。母親になりたい女性も、働きたい女性も、それを両立させたい女性も、すべての女性が安心して社会貢献できる仕組みを作ることが重要でしょう」

――今後10年間で、女性にとって必要となるもっとも重要な変化は何でしょうか?

「そうですね、何と答えればいいでしょうか。多くはありきたりな答えになってしまいますが、育児制度の充実や、男性との賃金格差の是正などが挙げられると思います。そうした変化が起きれば、ビジネスの世界でも、役員会でも、企業の指導部でも、私の身近な学術界でも、女性が安心して働けるようになるのではないでしょうか。幹部やリーダーとして活躍する女性が増えることも、引き続き必要だと思います」

「自分の可能性を信じられなかったり、あるいは職場から歓迎されていないと感じたりして、社会参加を諦めてしまう女性は数多く存在します。巨大な公立大学の指導教授である私自身、自分の能力を疑う女子学生を何人も見てきました。それが文化に由来しているのかどうかはわかりませんが、女性は男性に比べ、自分の能力を疑う傾向がはるかに強いようです。したがって、大学の課程を修了する上でも、奨学金を受け取る上でも、仕事や出世を勝ち取る上でも、企業の最高位に登り詰める上でも、女性は男性より不利といえるかもしれません」

――よくわかります。私は先日若い女性から、「インポスター症候群にかかったら、どうやって乗り越えますか?」と質問されました(「インポスター症候群」とは、1970年代に心理学者が考案した言葉。確かな実績を残しているにもかかわらず、自分の才能を疑ったり、自分は偽物なのではないかと感じたりする人々を指す)。彼女には「辛抱あるのみ。自信を持って行動し、前進し続けることが大切です」と答えましたが、男性からこのような質問を受けることはめったにありません。

「おっしゃる通りです。どうにかして現状を変えなければいけませんね」

――ここで少し話題を変えます。歴史的な人物の中で、あなたにもっとも近いと感じられる人は誰ですか?

「ドロシー・ホジキン氏(1964年にノーベル化学賞を受賞した英国の化学者。X線を使用し、ペニシリンに代表される重要な化学物質の構造を決定した)でしょうか」

「数年前にホジキンの伝記を読んだとき、女性研究者としてあらゆる壁に立ち向かう彼女の姿に感動を覚えました。彼女は家族を持っていましたが、仕事の都合上、子どもたちとは長いこと離れて暮らしていたようです。そのつらさは私にも想像がつきます。最高の研究者になること、高いレベルで仕事に取り組むことに情熱を注いだホジキンですが、本当は母親としても妻としても、その責任をまっとうしたかったのではないでしょうか。彼女の物語には大きな影響を受けました」

――存命する人物についてはどうですか?

「ミシェル・オバマ氏に共感します。彼女に関するあらゆるニュースを見聞きして、本当に素晴らしい人だと感じました。驚くほど知的で、仕事のできる女性ですが、妻として母親としての素晴らしさも兼ね備えています。あれほど凛(りん)とした女性はいません。彼女が体現する気品に、私は憧れています」

――この質問では、過去にも同じ回答をした人が1人いました。

「それも当然ですね」

――あなたにとって、転換点となる出来事は何でしたか?

「ハーバード大学の大学院で勉強を始めた頃、私を将来的に科学者の道へと導く決定的な出来事が起こりました。私はハワイの田舎町で公立学校に通っていましたから、ハーバード・メディカル・スクールに進学できたこと自体が、ある意味では驚きでした。非常に優秀な学生たちに囲まれ、自分はこの世界で生き残っていけるだろうかと不安に思ったものです」

「そんなある日の午後、指導教員でノーベル賞受賞者のジャック・ショスタク氏がやってきて、私に実験に関する意見を求めました。実績の上でも能力の上でもはるか先を行く人物から、若い大学院生が助言を求められたときの気持ちを想像してもらえるでしょうか。その瞬間、私は自分の意見に価値があるのだと悟りました。ショスタク先生が私を信頼してくれたおかげで、私も自分自身を信頼できるようになったのです」

――あなたの最大の強みは何ですか?

「執着心ですね。いったんアイデアが浮かんだら、それを実現させるまで諦めません。骨の折れることでもありますが、私が科学界で多くのことを成し遂げられたのは、自分のしぶとい性格のおかげだと思います」

――あなたがこれまでに乗り越えてきた、最大の壁は何でしょう?

「自分に対する疑いは、何度も乗り越える必要がありました。具体的には『私が生化学者になんてなれるのだろうか?科学者としてやっていけるだろうか?』といった疑いです。私にとって成功とは、金銭的報酬や専門家からの称賛を意味しません。『自分を誇りに思えるような研究ができているだろうか?人生の選択を誤らず、心から得意なことを仕事にしたと言い切れるだろうか?』という問いにイエスと答えられること、それが私の考える成功です」

若い頃には、こうした問いに自分でノーと答えてばかりでしたから、やはり何かがうまくいっていなかったのでしょうね。ですがご存じの通り、私はしぶとい性格ですから、途中で投げ出すことはありませんでした。自分の選択を疑う声が頭の中に響いても、次の瞬間には『辞めるつもりなんてないくせに』という矛盾した声が聞こえてくるのです。おかげでいまは正しい道を選んだと思えるようになりましたから、これからも研究は粘り強く続けていくつもりです。同じような疑いは誰でも多かれ少なかれ抱くものだと思いますから、1人1人がそれを克服する方法を探さなければならないでしょう」

――若い女性たちに、アドバイスをお願いします。

「まずは、堂々と社会に参加することです。男性たちは既に気兼ねなくそうしています。もう一つ若い女性たちに伝えたいのは、人生のパートナーを賢く選んでほしいということです。子どもについても、仕事についても、生活様式についても、女性の選択に理解を示すパートナーがいれば、その女性は自身の能力を最大限に発揮できるでしょう」

(聞き手 英語版編集長スーザン・ゴールドバーグ、訳 湊麻里、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年10月8日付の記事を再構成]

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