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SEとSeries 6はどこが違うのか

Apple Watch SEとSeries 6についても比べてみよう。SEのケースは44ミリと40ミリのサイズから選べるが、素材はアルミニウムのみ。色もSeries 6の5色に対し(アルミニウムの場合)、SEはシルバー、スペースグレイ、ゴールドの3色に絞られる。

Apple Watch SEのスペースグレイ

SEのSiP はSeries 5と同世代の「S5」を搭載する。パフォーマンスは最新世代のS6に軍配が上がるものの、まだ現役バリバリのハイスペックなチップである。当然、性能に不満は感じなかった。

Series 6と同サイズの大きなディスプレーを搭載しているが、常時表示には対応していない。そのぶんバッテリーの消費が抑えられるとポジティブに捉えるべきか。内蔵バッテリーによる連続駆動はSeries 6と同じ約18時間だ。

血中酸素ウェルネスセンサーや電気心拍センサーも、SEには搭載されていない。ただ、そのセンサーを使う心電図(ECG)や不規則な心拍を通知する機能は、日本ではまだ使えない。

本体の裏面。左はSeries 6で右がSE。搭載しているセンサーが異なるため、センサーのレイアウトが少し異なる

英語圏でサブスクサービス「Apple Fitness+」開始

血中酸素ウェルネスアプリやケースの素材、色にそれほどこだわりがなく、安くて高機能なApple Watchが欲しいならSEがベストな選択肢だ。スポーツやフィットネスのデータをトラッキングしたり、日々の健康チェックを実践したりするためなら、SEで不満を感じることはまずないだろう。ケースの質感も上々だ。

ただ、実はもう1つSeries 6のみのハイライトがある。アップルが独自に開発した空間認識のための超広帯域無線チップ「U1」だ。今のところその用途は明らかにされていないが、今後「隠し球」的な新機能の発表が控えているのかもしれない。

さらに20年末から北米や英国など英語圏の6カ国で、Apple Watchを中心とするAppleデバイス向けの新しいサブスクリプション(継続課金)サービス「Apple Fitness+(フィットネスプラス)」も始まる。

室内向きの種目でありながら、1人では習得しづらいヨガやダンスなどのワークアウトを、コーチのインストラクション動画とエクササイズに最適な音楽とともに配信するサービスだ。iPhoneやiPadなどの広い画面で見るコーチング動画と、Apple Watchに表示されるアクティビティーモニターが同期する。月額9.99ドル(約1000円)という、リーズナブルな価格で健康増進・管理が図れる。モチベーションが持続するなら、動きが制限されるコロナ禍の状況にあっては、頼もしいサービスになるだろう。

アップルのフィットネス動画配信「Apple Fitness+」が年内に英語圏を中心にスタートする

このようにアップルは、Apple Watchでもハードとソフトの両輪による独自のエコシステム強化に本気で乗り出してきた。特にフィットネス・ヘルスケア系の機能やサービスを豊富にそろえた部分に、「もうiPhoneユーザーには、他社のフィットネス・ヘルスケア関連のデバイスを身に着けさせまい」という、アップルの強い意思表示を感じる。

(文・写真 山本敦)

[日経クロストレンド 2020年10月2日の記事を再構成]

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