お笑い特番ラッシュの裏側 第7世代・コロナ・広告主

テレビ界で今、お笑いのジャンルが活況を呈している。注目はネタ特番。『エンタの神様』(日本テレビ系)や『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)など、以前からあるものも健在だが、今年に入ってから、各局で新しいネタ特番が続々と立ち上がっているのだ。

千鳥の大悟(左)とノブ(右)が進行役の『千鳥のクセがスゴいネタGP』は、芸人たちが普段のネタとは一味違う“クセがスゴくてクセになるネタ”を届ける。5月と8月に特番として放送し、10月からレギュラーに。タイトルに「GP(グランプリ)」と付くが点数化や評価はしない方針

50組もの芸人がメドレー形式でネタを見せた2月放送の日本テレビ『NETA FESTIVAL JAPAN』を皮切りに、3月には各芸人の“ベストワン”のネタを披露する、TBSの『ザ・ベストワン』が登場。5月にはフジテレビで『全力!脱力タイムズ』のチームが手掛ける『千鳥のクセがスゴいネタGP』(以下「クセスゴGP」)が誕生し、テレビ朝日は8月に、1組が漫才とコントの両方を見せる『お笑い二刀流』を放送した。『ザ・ベストワン』は第3弾を放送、『クセスゴGP』は今月からゴールデンでのレギュラー放送が始まった。

『クセスゴGP』企画担当のフジテレビ編成部・狩野雄太氏は、番組が生まれたきっかけをこう話す。「4月に新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出て、収録がすごく制限されたんです。何かできないかと考えたときに、最初に思い浮かんだのが“ピンネタ”でした」(以下同)

結局はピンネタに限らない構成になり、かまいたちのコントや、シソンヌのじろうによるインスタライブをする変なおじさんなど、数々のエキセントリックなネタが生まれた。「世帯視聴率は、5月の第1弾が6.4%で、8月の第2弾が8.2%。今フジが重視している13歳から49歳の“キー特性”では、第2弾は横並びトップでした。親子など複数人で見る数字が良く、ネットでコミュニケーションする世代とも親和性が高い番組になったかなと思います」

ではなぜ、ネタ特番が増えているのか。狩野氏は「いくつかの要素が複合した結果なのでは」と指摘する。1つは、昨年から30歳以下の若手を中心とする“第7世代芸人”というくくりができ、芸人にスポットが当たる時代が巡ってきたこと。2つ目は、3月頃からコロナの感染拡大で、社会全体が重い状況のなかで、笑いを求める視聴者のニーズと、制作側の「明るい番組を届けたい」という思いが合致したこと。「加えて個人的には4月にゴールデンでレギュラーになった『有吉の壁』(日本テレビ系)が革新的だったと思う。長年ゴールデンでは当たらなかったお笑い番組を成功させたのは、意義深いこと」

さらに、広告クライアントの要望の変化に合わせ、今年4月から各局で世帯視聴率ではなく、“キー特性”のような若い層を重視する方針に変わった。世帯視聴率の場合、60歳以上の年配層の支持も得ようとするため、長らく情報バラエティー番組が数多くタイムテーブルに並ぶ傾向があった。「お笑い番組は、基本的には若い人たちが楽しんでいると数字上でも出ている。もちろん、年配の方にも面白いと思っていただけるように頑張りますが、この機運に乗りたいです」

この流れを象徴するかのように、TBSでは9月26日に『お笑いの日』と題して、『キングオブコント』の決勝も組み込み、音楽特番のように8時間も生放送でネタ企画を放送した。ここまでの力の入れようは異例のこと。しばらくお笑い界の興隆期が続きそうだ。

(日経エンタテインメント!10月号の記事を再構成 文/内藤悦子)

[日経MJ2020年10月9日付]

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