パソコン記憶装置、主役はSSDに 価格は4割安く

パソコンを使う際に絶対に必要なのが「データ保存」。その役目を担うのが記憶装置です。この記憶装置の主役が磁気を読み取るハードディスクドライブ(HDD)から半導体を使うSSDに代わってきました。値段の移り変わりとシェアの変化から見えてくるものとは。

値段は100万分の1に

記憶装置の値段はどんどん安くなっています。様々な記憶媒体がありますが、ざっくり値段の推移をみると1985年は1ギガバイトあたり約500万円でした。現在は約5円と100万分の1程度になっています。仮に、今の主流になっている1テラバイトで5000円の製品を1985年にタイムスリップして売れば、50億円で売れることになります。

パソコンやスマホは突き詰めると、すべてスイッチがオンかオフ、0か1かということで全ての処理を行っています。ゲームで遊ぶのも、写真を表示するのも全部このスイッチの組み合わせだけで表現しています。記憶装置はこの0と1を磁気や電気を使って素子に記憶します。値段が劇的に下がったのは、小型化により低コストで素子を大量に作れるようになったのが理由です。素子は現在、インフルエンザなどのウイルス(100ナノメートル)より小さいものも登場しています。

HDDからSSDへ

パソコン向けの記憶装置は今大きな転換点にあります。キーワードは「HDDからSSDへ」。ハードディスクは磁気を使った記憶装置です。小さな磁石がいっぱい並んだディスクが入っていて、レコードのように回転しながらデータを保存したり、読み出したりします。一方、SSDは半導体を使った記憶装置です。HDDに比べて動作が速く、回転しないので揺れや衝撃で壊れることが少ないのが特徴です。

なぜ今、切り替わっているのでしょうか。SSDが安くなっているからです。SSDは2年前に比べ4割ほど下落している。一方、HDDは5%程度の値下がりにとどまっています。1ギガバイト当たりの容量単価ではまだまだHDDのほうが安いですが、2年前に9.5倍だったSSDとHDDの価格差は5.7倍まで縮まっています。

モーターと磁気ディスクを使っているHDDは製造が難しく、米シーゲイト、ウエスタンデジタルなど数社しか作っていません。技術的にも成熟しており、大幅なコスト削減が難しくなっています。一方で、SSDは比較的簡単に作れるので、メーカーは多い。競争原理が働きやすいSSDの下げがきつくなっています。

調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、19年はSSDを搭載した製品は6割を占め、ハードディスクドライブの搭載率を逆転しました。来年には8割を超えるとの見方があります。

次世代ゲーム機への採用も進んでいます。ソニーの「プレイステーション(PS)5」や米マイクロソフトの「Xbox」の新商品はいずれも記憶媒体としてHDDではなく初めてSSDを採用します。

磁気テープも健在

ただ、全面的にSSDに置き換わるわけではありません。SSDにも長期間のデータ保存に向いていないなどの弱点があるため、他の記憶装置も用途に合わせて併用されます。HDDはデータの長期保存には適しています。

昔からある磁気テープもバリバリ活躍中です。グーグルなどの大手IT企業のクラウドのバックアップやテレビ局の映像アーカイブなどではLTOと呼ばれる「昔のVHSビデオ」のような磁気テープが使われています。磁気テープはデータを読み取るまでの時間はかかるものの、保存期間が30年程度と長い。HDDに比べコストも安い。使用頻度が低いけれども、長期保管が求められる「コールドデータ」に適しています。

量子コンピューター時代の記憶装置

記憶装置はデジタル技術の進化には欠かせません。例えば、話題の量子コンピューターは処理速度がスーパーコンピューターの16億倍ともいわれています。その活用には膨大なデータを保存できる記憶装置が必要になります。つまりさらなる小型化・大容量化が必要です。最新の研究では遺伝子情報を記憶するDNAを記憶媒体として使おうということも試されています。DNAなら3万前に凍ったマンモスのDNAもしっかり残っており、長期保存にはうってつけというわけです。未来感のある話ですが、量子コンピューターを3年以内に産業分野で活用しようという動きもあります。DNAが記憶装置になる日も意外と近い未来かもしれませんね。

(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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