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事業支援特集

2020/10/26

事業支援特集

「2000年代に入って多くの日本企業は『選択と集中』の名の下に主力事業を選び、作り込み、効率を上げてきました。うまく回す、早く回すという『守りの経営』に徹してきたと思います。既存事業の深掘りをするが、新しい領域で活路を開くということをあまりやってこなかった。新規事業に出ていく場合も、これまでの事業を少し拡張していくという、いわば『染みだし』でした。特に中小企業では、以前からある製品のスペックを少し高めた新製品開発の発想にとらわれがちです」

――コロナ禍を踏まえ、さまざまな経営環境の変化に耐えうる強い組織づくりが必要になってきたようですね。

「既存事業に軸足を置きながら新しい足場を築き上げていくことが重要です。軸足をもとに体を回転させるバスケットボールにあるピボットの考え方です。新しく作る足場は小出しにして、失敗しそうであればすぐに引っ込める。ここが大事です。また、新規事業を考えるときに重要なのは、自社の創業の原点に立ち返ること。自分たちの会社はどういう存在か、今までの歩みを見つめ直し、この先、どこに向かおうとしているのか。それを再定義して、方向性を打ち出す。つまり、創業以来、代々の経営者が築き上げてきた事業をもとに、新しく会社を立て直す『第2創業』の発想が必要といえます」

――具体的には。

「コロナ後、ある地方都市に本社を置く水処理機械メーカーの経営幹部から相談を受けました。主力事業では国内でも有数の市場シェアを握り、社歴も実績もある有力企業です。事業はそこそこうまくいっているが、これまでのように固定の主要顧客向けに事業を展開し続けていても大丈夫か、という内容でした。そこで私は、何のために今の会社になったかを考えてはどうかと助言しました。『水を制御する』という創業の原点に立ち返り、その技術を生かして新規のサービスに打って出るか、新たな市場を開拓するほかはありません。水処理技術を生かせば、例えば発電や農業用といった分野への参入も見込めます。今の会社でできることと、できないことを見極め、できない分野は他社と組んで協業する。これからは水平分業で新たな世界に入っていく、そこに勝機が生まれる可能性があると話しました」

――コロナ禍で需要が大きく減少し、事業への影響が避けられなくなっています。売り上げや利益の見通しが立たない中、中堅・中小企業が経営計画を策定する上で何が必要でしょうか。

「中堅・中小企業にとって、金融機関から融資を受ける際に経営計画を立てることも必要ですが、自社の長期ビジョンをいかに構築するかの方がより本質的な課題です。経営計画を作るときに多くの企業が陥りがちなのは、積み上げ式の業績計画を立てることです。特にコロナ禍に直面したいま、年率何%と過去の業績をもとにした計画を立ててもあまり意味はありません。経営計画は会社の未来、方向性を、社員一丸で考える絶好のチャンスです。どの事業を残すか、それとも捨てるか。創業の原点を見つめ直しながら、これまでの事業に価値判断をつけ、新規事業を考えるときです」

加藤雅則
1964年生まれ。慶大経卒、カリフォルニア大バークレー校経営学修士(MBA)。日本興業銀行(現みずほ銀行)入行後、環境教育NPO(非営利組織)や事業投資育成会社を経て、コンサルティング会社アクション・デザインを設立。主な著書に『自分を立てなおす対話』(日本経済新聞出版)など。

(聞き手は白山雅弘)

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