2020/10/26

自己分析で「夢」にばかり目を向けないで

――これからの働き方のポイントは何ですか?

何がやりたいかを無理に決める必要はありません。よく自己分析や社会人の新人研修などで登場する「Will、Can、Must」(やりたいこと、できること、やらなければならないこと)。最近は、「Will」=将来どうありたいのか、を問われる風潮が強いように感じます。ここにプレッシャーを感じている人が多いのではないでしょうか。それを一緒に考えるために、私のようなキャリアコンサルタントがいます。とはいえ、「自分はどんな人物になりたいのか」、「どのような人生を送りたいのか」は、そう簡単に決められるものじゃないのです。

でも、「Can」や「Must」から考えていけば、やりたいことが見つけやすいのです。まずは、できることややるべきことを一生懸命やってみる。それが大切です。そのうちにやりたいことが具体的に見えてくる、見えてきたらシフトチェンジしていくのです。

そして、一度決めたことを一生貫き通す必要もありません。やってみて違うと思ったら、柔軟に変化させればいいのです。そう考えると、自分に無駄なプレッシャーをかけずにすむので、気も楽になります。

――学生のうちに、やっておくべきことを教えください。

インターンは、おすすめです。学生インターンだからこその特権がある。社長や役員に会えることもあります。いろんな会社や人に出会って、社会を知るように心がけましょう。友達は、無理に増やす必要はありません。友人、先輩、教授、一生の付き合いができる人に数人でも出会えれば幸せです。もし学校内にいないと思うのであれば、課外活動やアルバイトなど、普段活動している範囲の一歩外に出てみることで、新たな出会いにつながります。

できれば、双方向のコミュニケーションツールで、自分の考えたことを投稿し、フィードバックをもらうようにしましょう。社会人になって必要なのは、相手の考えていることを理解し、自分の考えを丁寧に伝えていく、インタラクティブ(双方向)のコミュニケーションです。仕事をしていく上での全ての根底に、コミュニケーションがありますから。

◇  ◇  ◇

塚田さんからのアドバイス、いかがでしたか? 迷うこと、悩むことは、誰にでもあるのです。この連載でも何度も取り上げてきたように、一つに固執しないで、変化やニーズにあわせて臨機応変に適応していく姿勢が必要になってきますね。

やってきたことと、やりたいことをしっかり言葉にして伝えていくようにしましょう。言語化する修練の機会として、皆さんの目の前の卒業論文も、貴重なトレーニングになりますね。残りの期間、充実した学生生活を過ごせるよう心がけていってください。

塚田亜弓
 1988年生まれ。現職及びトライアンフにて、人事コンサルタント業務9年。採用、教育研修、労務制度づくりなど、幅広くHR業務に従事する。2017年1月にHRラボを設立し、社長就任。創業後、企業内セルフ・キャリアドック制度の導入実績は1,000社を超える。厚生労働省キャリアコンサルタント更新講習の認定講師。キャリアコンサルタントのためのコミュニティ「キャリコンサロン」創設者。
田中研之輔
1976年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。日本学術振興会特別研究員(SPD:東京大学) 2008年に帰国し、法政大学キャリアデザイン学部教授。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。企業の取締役、社外顧問を19社歴任。著書25冊。『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP社)など。最新作『ビジトレ―ミドルシニアのキャリア開発』(金子書房)

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