2020/10/24

ブライナー氏のグループは今回、両者の隙間を埋めるとともに、より高度な手法でグリーンランドの氷床融解の歴史を再現した。まず、グリーンランド各地から採取した複数の氷床コアから得られた気温と降雪量のデータを、氷床モデルに組み込んだ。次に、気候モデルによる情報を氷床全体に適用した。

そうして構築したモデルを使い、1万2000年前から西暦2100年まで計算を走らせた。その結果、現在のグリーンランドの氷床融解が、完新世の始まり以降に生じた他の融解より突出して速いペースであることがわかった。

「このようなペースで変化したことはない」

「完新世の気候最温暖期」として知られる1万年前~7000年前にかけての温暖化では、グリーンランドの氷床が大幅に縮小した。特に極端な時期には100年間で約6兆トンもの氷床が融解した。実は現在、それに匹敵する事態が進行中だ。もし2000~2018年の平均的な融解速度が今後も続けば、グリーンランドの氷床は今世紀に6兆1000億トン失われると予測されている。

だが、この6兆1000億トンという予測ですら控えめだった。大気中の炭素量が増え続けるにつれて、地球の温暖化は進行し、平均的な融解速度も加速し続けるだろう。2012年と2019年の夏には、気候変動に熱波が追い打ちをかけ、膨大な量の氷床が融解したが、グリーンランドには今後もこのような極端な融解が生じる年が来ると考えられている。

炭素排出量が少ない場合と多い場合のシナリオを用いて、ブライナー氏らのモデルが描き出した氷床の未来では、人類が世界の炭素排出量をすみやかに減らす楽観的な「RCP2.6シナリオ」の場合、グリーンランドが今世紀中に失う氷の量は約9兆7000億トンと推定された。だが、化石燃料を無節制に燃やし続ける「RCP8.5シナリオ」なら、今世紀に約21兆トンの氷が融解する可能性がある。これは、過去1万2000年で最も速かったときのおよそ4倍の速度と推定される。

後者は悲観的なシナリオとみなされているが、グリーンランドの最近の氷床の減少を考えると、最も現実に近いシナリオだ。また、RCP8.5の下ではグリーンランドの氷がわずか1000年以内に消失するとした、2019年に学術誌「Science Advances」に発表された別の論文の結論とも合致している。

米国立雪氷データセンター(NSIDC)の雪氷学者テッド・スカンボス氏は、この研究について、「過去の記録、現在の測定、そして将来の予測にまで及ぶモデル化という、3つの要素の優れた融合です」と評している。なお氏は今回の研究には関わっていない。

「さらにこの論文は、『これまでも地球は常に変化し続けてきた』と言いながら気候変動の影響を否定する人々に対して答えを示しています。つまり、『このようなペースで変化したことはない』ということです」

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モデルの限界と次のステップ
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