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卓球、平野早矢香さん 伝説の雀士に学んだ直感力

元五輪メダリストに聞く(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

全日本選手権3連覇を含む5度の日本一に輝き、2008年北京五輪で卓球女子団体4位、12年ロンドン五輪卓球女子団体銀メダルを獲得。現在はスポーツキャスターとして活躍する平野早矢香さん。第1回は、鬼のような形相で戦うイメージから「鬼の平野」と異名を持っていた彼女に、メンタルのコントロール術について伺った。

◇   ◇   ◇

――現役時代、「鬼の平野」「卓球無双」などと呼ばれ、闘志をむき出しにして粘り強いプレーをされていた印象が強かったですが、もともとメンタルは強かったのでしょうか?

私自身、自分のことをメンタルが強い選手だったとは一度も思ったことはありません。特に、幼い頃は、それが試合の結果に顕著に表れていました。石川佳純選手や伊藤美誠選手といったトップ選手は、小学校の時から大舞台でも動じずに、同世代の中で日本一の座をつかんでいましたし、彼女たちと比べると、高校まで全国で優勝できなかった私は、大事なところで勝ちきれない選手だと、周りからも評価されていました。そこからメンタルを強くしたというよりも、経験を積んで弱いメンタルを少しずつ克服し、コントロールしていったタイプだったと思います。

――大事なところで勝ちきれなかった原因は?

今は引退して、人と競わなくてもいい生活がすごく心地よく楽しく感じているので、自分の性格的な要素も原因の一つかもしれません。ただ基本的に負けず嫌いで、絶対一番になりたいという気持ちでプレーしていましたが、「自分が一番になれる!」という自信が持てませんでした。大切な場面でこそ、そんな弱い気持ちが出てしまうところが、トップになれなかった原因だと思います。

――高校1年のときに初のタイトルを獲得されます。ブレークスルーは?

タイトルを取る大会の前に、中国合宿をしていたタイミングで参加したテレビマッチで当時の中国のジュニアの代表選手に勝ち、技術的にも上達している感覚を得ていました。それはすごく自信になって、今度こそ高校生の中で日本一を狙えるのではないかと感じていました。

それが帰国後、練習の中でミスが続き調子も上がらず、原因も分からなかったので、1人でずっとイライラしていました。

見かねたコーチは、「君は自分が思っているほどのレベルの選手じゃない」と私を叱りました。それでハッとしました。ああ、勘違いしていたなと。決して、図に乗っているわけでも、おごる気持ちもなかったですが、何が何でも優勝を目指す、今度こそ優勝できるという思いが強すぎたため、気持ちが空回りしてしまった。これをきっかけに、一戦一戦ベストを尽くそうといったマインドに変わり、目の前の試合に意識を向けられました。

優勝して初タイトルを獲得したものの、順風満帆にタイトルを取り続けたわけではありません。インターハイではダブルスと団体戦では優勝しましたが、個人では優勝できないなど、自分が目指していた絶対的王者にはなれませんでした。

――高校卒業後、18歳でミキハウスに入社され、2004年には全日本卓球選手権のシングルで初優勝されます。

入社したときは、全日本ベスト8が最高成績でしたが、その年の年末までに、世界ランキング50位までに入り、全日本卓球選手権優勝という目標を掲げて、必死に強化していました。1年弱全力を尽くした結果、世界ランキングも年末には目標の50位以内に入って順調に進んでいましたが、肝心の全日本選手権直前に大きく調子を落とし、精神的に不安定になっていました。

1年間頑張ってきたのになぜ……ともやもやしていたときに、書店でたまたま手に取った1冊が、『「原因」と「結果」の法則』(ジェームズ・アレン著)でした。そこには、「結果は全て内面の原因によってつくられ、結果を変えたいのであれば、原因を改善しなくてはならない」とか、「目標を達成するには、そこに自分の思いを集中させなくてはならない」といったことが書かれていました。

そのときも意気込みすぎて優勝ばかり追い求めていた私でしたが、本の言葉のおかげで、「原因(=準備)を見直してしっかりやっていこう」と、気持ちを切り替えて落ち着くことができました。試合当日も決して良いコンディションではなかったものの、「やるべきことはやった」と自分に言い聞かせ、試合に集中して臨むことができた。それが、全日本卓球選手権女子シングルで優勝という結果につながったのだと思います。

スランプにも原因が必ずある

ちなみに、スランプという言葉がありますが、結果が出ないことをスランプという一言で片付けてしまうのは、目の前の問題から逃げるようで、私は好きではありません。

私もスランプに陥ったことはあります。北京五輪後の2008年のルール改正で、ラケットにラバーを貼るスピードグルー接着剤(ボールのスピンと性能が高まる有機溶剤)の使用が禁止になり、「一発で打ち抜ける強打を身につけたい」という一心からラケットやラバー、練習内容もガラリと変えました。すると、練習でボールが台に入らず、それまで勝てていた選手に勝てなくなるなど、自分の卓球がグチャグチャになってしまったのです。原因は、北京五輪でメダルに届かなかった悔しさから、全てをいっぺんに変えてしまったことにありました。いったん落ち着いて、コーチのサポートを得ながら元のプレースタイルに戻し、そこから新たな課題に取り組むことで、少しずつ調子を取り戻すことができました。

やはり、結果が悪ければ必ず原因がある。現状を見つめ直し、焦らず落ち着いて、原因を探ることが大事。時間がかかったとしても、スランプを抜け出す可能性は高まると思います。

伝説の雀士に素振りを見てもらう

――平野さんは読書家でいらっしゃって、経営本から卓球で強くなるためのヒントを見つけたり、卓球とは関係ない分野からも貪欲に学ばれたりしていましたよね。

通常のメンタル本などを一通り読んだり、メンタルトレーナーと呼ばれる方の話を聞きにいったりしました。とにかく卓球の役に立つのならと、卓球の世界にこだわらず自分が興味を示し、知りたいと思ったことは積極的に調べて追求して、会いたいと思った人にはためらわずに会いにいきました。

卓球に役立つと思って古武術の動きを習ったり、北島康介さんや萩野公介選手に金メダルを取らせた競泳の平井伯昌コーチに話を聞いたり、「20年間無敗」を誇る伝説の雀士・桜井章一さんの思考も学びにいったりもしました。

桜井さんに会いにいったのは、北京五輪前の23歳のとき。彼の著書を読んで、感動したのです。勝負に対する心構えや視点が、あまりにも一般論とかけ離れていて、なんて面白い思考の持ち主だと新鮮に感じました。麻雀(マージャン)の心理戦が卓球にも役立つかもという気持ちもありましたが、純粋に桜井さんの考え方や生き方に触れたい、彼から見た私はどんなふうに映るのかを直接聞きたくて、「これから人生最大の大勝負が待っています。勝負に対する心構えを教えてください」と手紙を送り、東京都町田市にある雀荘に向かいました。麻雀はまだ一回も打ったことがなく、ルールも知りません。もちろん、雀荘にも行ったことがなかったので、ドアを開けた時の異様な雰囲気に一瞬たじろいだことを覚えています(笑)。

桜井さんは会うなり、「素振りしてみて」とおっしゃいました。ラケットを持ってきていたので、バッグから取り出してその場で素振りをすると、「平野さん、あなた左手がうまく使えてないね」と言われました。卓球ではラケットを持たない手をフリーハンドと言いますが、確かにフリーハンドはボールを打ったり、動きの中で体のバランスを維持したりするために重要な部分。いきなり左手をうまく使えばいいという、専門家でもない人からの鋭い指摘にただ驚き、ああやっぱり面白いな、桜井さんの話をもっと聞きたいなと思いました。

――そのほかに、桜井さんから言われて心に残っていることは?

「早矢香ちゃんはすごく考えて試合をしているけど、大事なのは、考えることよりも流れを感じてつかむことなんだよね」と言われて。当然流れは目に見えないもので、理解して実行するのはすごく難しい。でも、肌で感じることが大切で、言葉で表すと「直感」とか「ゾーンに入る」がイメージに近いと思います。私も何度かゾーンに入ったことがあります。言葉にするのは難しいですが、台がいつもより小さく見えて俯瞰(ふかん)している感覚になったり、ボールが来るところにすでに自分が立っている感覚になったりしました。どうすればゾーンに入るのか、分かりませんでしたが、桜井さんが話された「流れをつかむ」とすごく通じることがあって、そうした目に見えない「感じること」を大事にしました。

理論派の私は、直感やひらめきが足りないタイプだと思っていました。でも振り返ると、体の動かし方はもちろん、人間関係や人生の大きな選択などは、直感や違和感で判断してきたように思います。直感って天から降ってくるイメージですよね。でも私の場合、心のよりどころであり、自分を信じる根拠であった、人よりも多い練習量や経験の積み重ねで、直感も磨かれたような気がしています。

(第2回に続く)

(ライター 高島三幸、写真 厚地健太郎)

平野早矢香さん
1985年栃木県生まれ。5歳で卓球を始め、中学から宮城・仙台へ卓球留学。高校卒業後、ミキハウスに入社し、18歳で全日本卓球選手権・女子シングル初優勝。その後、3連覇を達成し、通算5度の日本一に輝く。2008年北京五輪団体戦4位、2012年ロンドン五輪団体戦で銀メダルを獲得。現在はスポーツの解説、講演会など活動の幅を広げている。著書に『卓球メンタル強化メソッド』(実業之日本社)など。

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