日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/10/23

小さいことの利点

三畳紀に生息した、恐竜と翼竜の共通祖先に近いコンゴナフォンは、体高がわずか10センチほどと、ネズミ程度の大きさだった。現在のマダガスカルに生息していたこのちっぽけな爬虫類は主竜類の仲間だった。

コンゴナフォンについて現在わたしたちが持っている手がかりは、文字通りひと握りの骨だけだ。それでも、爬虫類の進化の中でコンゴナフォンが占める位置や、小さな体の意味から、恐竜の台頭にとっても彼らのような特徴が非常に重要だったことがわかる。

数十年におよぶ発見の積み重ねにより、恐竜も翼竜も活発な恒温動物であったことがわかっている。また一部の仲間は、体がふわふわとした羽毛のようなものに覆われていた。

コンゴナフォンにその直接的な証拠はないものの、「コンゴナフォンなどの動物たちは、原始的な羽毛に覆われている姿で描かれます。これは関連のある動物たちに羽毛があることに基づく合理的な推測です」と、プリチャード氏は言う。

もしこの推測が事実であれば、コンゴナフォンのような特徴が、恐竜や翼竜の子孫たちにも受け継がれていたと考えられる。

小さな動物は体温を調節するのが難しく、体を覆う羽毛は寒暖差を緩和してくれる。また、体の小さい生物は多くの場合、昆虫などを捕らえ、また捕食者から逃げられるように、走ったり跳んだりする能力が欠かせない。そのため、代謝が速く、高カロリーの食べ物をたくさんとる必要があり、体温の維持は生き残りの鍵になりうる。

体長18センチほどのスクレロモクルスという小さな爬虫類もまた、この進化の物語にかかわっていたかもしれない。スクレロモクルスがカンガルーネズミのように高くジャンプしたのか、それともカエルのようにピョンピョンと飛び回っていたのかについては議論があるが、いずれにせよこの動物は、同じように羽毛に覆われていた翼竜の起源において、重要な役割を担っていた可能性がある。

こうした説を検証するには、さらに多くの化石の発見を待たなければならない。とはいえ、三畳紀が終わり、恐竜がより多様な大きさや形態に進化していく中で、羽毛や俊敏な体といった小さな祖先たちの特徴が受け継がれていった可能性は高い。そうした遺伝が、再び大量絶滅が起こったときに、大きな違いをもたらしたのかもしれない。

恐竜、頂点に立つ

2億100万年前の三畳紀の終わりに、火山活動が再び活発化した。その影響はペルム紀末期の大量絶滅のときほど大きくはなかったものの、地球の気候を不安定にする程度には深刻なものだった。

このときの大量絶滅の経緯についてはまだくわしくはわかっていないが、三畳紀に支配的だったワニの仲間などが、世界的な気温の急上昇とその後の冷え込みに対応できなかった可能性がある。

一方、恐竜や翼竜は原始的な羽毛のおかげで、体温をうまく調節できた。また、この時期にはすでに恐竜も翼竜も、多様で適応力のある生物群へと進化していた。小さく俊敏な肉食の恐竜たちが、首の長い巨大な草食動物とともに暮らし、翼竜は空を飛べる最初の脊椎動物となっていた。

そして、恐竜が頂点に立つ時代が訪れる。ジュラ紀の到来だ。

約1億7500万年前のジュラ紀中期には、恐竜が完全に世界を支配していた。メガロサウルスのような、後方に反ったノコギリ状の歯を持つ巨大な捕食者たちが森をうろついていた。ファヤンゴサウルスなどの、体高が低く、体をよろいに覆われた草食恐竜がシダを食べていた。そしてスピノフォロサウルスのような首の長い大型草食動物は、やがて史上最大級の陸上動物へと進化していった。

何百、何千万年もの間、脇役を務めていた恐竜たちが、ついに主役に躍り出たのだ。

最初に述べたように、その時代はおよそ1億5000万年という長きにわたる。

だが、恐竜たちが栄華を極めた時代、彼らは知らず知らずのうちに、次なる支配者の台頭に一役買っていた。その支配者とは哺乳類だ。

哺乳類の祖先から生き延びた系統の一つから、新しい小さな生物の系統が生まれた。ほぼ夜間に活動する、ネズミよりも少し大きい程度の生物だった。恐竜の直接の祖先と同じく、彼らはふわふわの体毛をもち、代謝が速く、昆虫を好んで食べた。

歴史は繰り返す。命のサイクルがめぐる中、恐竜が支配する世界のかたすみで暮らしていた哺乳類たちだったが、小惑星チクシュルーブによってもう一度大量絶滅が起こって「恐ろしいトカゲ」が一掃されると、今度は彼らのもとに幸運が舞い込むことになる。

(文 RILEY BLACK、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年10月4日付]

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