「DXごっこ」の経営では勝てない 再生のプロが対談大転換期のリーダー論(上)

大転換期のリーダー論を語り合った冨山氏(右)と木村氏(木村氏の写真は佐久間ナオヒト撮影)
大転換期のリーダー論を語り合った冨山氏(右)と木村氏(木村氏の写真は佐久間ナオヒト撮影)

コロナ禍とデジタル・トランスフォーメーション(DX)が、危機的なインパクトを世界経済に与えている。混迷の時代を乗り切るために求められるリーダーシップとは――。『コーポレート・トランスフォーメーション』(文芸春秋)の著書がある経営共創基盤(IGPI)グループ会長の冨山和彦氏と、『管理職失格』(日本経済新聞出版)を出したIGPI共同経営者マネージングディレクターの木村尚敬氏が語り合った。

(下)空気を読まず「問い続けよ」 コロナに負けない管理職>>

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――新型コロナの影響がいつまで続くのか、先が見えないままです。

木村 コロナが終わったら短期間で復旧しよう、と考えている経営者は多い。しかし、これから必要なのは原状回復の「復旧」ではなく、システムをアップデートする「復興」です。新しいモデルをどう作り上げていくかに、論点を変えるべきでしょう。コロナ危機の初期には、短期的な資金繰りが最重要でした。感染拡大防止と経済対策の両立を探る第2ステップになると、売り上げが8割程度に縮んでも利益が出る構造改革に目標が移ります。この時間軸は1~2年でしょう。ただし、そこで終わってしまっては駄目です。第3ステップとしてコーポレート・トランスフォーメーション(CX=企業の変容)までやれる会社が、強くなっていきます。

小手先の変更ではなく、組織能力の刷新です。会社の「OS」自体を変えるイメージですね。これまでの日本企業の強みを支えていたのは、ボトムアップや集団意思決定の仕組みですが、「みんなで仲良く」では対応できなくなりました。一人ひとりが価値を生み出す方向に視点を移して、プロフェッショナル型人材に移行することが肝要です。

競技種目は野球からサッカーへ

『コーポレート・トランスフォーメーション』(右)と『管理職失格』

――デジタル・トランスフォーメーション(DX)をうまく進められないケースが多いと聞きます。

冨山 DXの中身が誤解されています。いわゆるIT化や事務効率化は、どんどん進めればいいんです。これは例えば「はんこをなくす」というレベルですね。問題は、もう一つ上のフェーズ。産業構造の転換です。これにどこまで踏み込めるか。

日本が得意だった分野でいえば、高級テレビを大量に製造して売る事業はすでに存続できなくなりました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)やネットフリックスの台頭した今、テレビは単なるディスプレーです。いかに超細密、大画面、ハイテクノロジーでも、人々は金を払わなくなりました。客の財布は、ネットフリックスやアマゾンプライム、ユーチューブに向かいます。

こうしたライバルに対抗するには、小手先のDXでは意味がない。競技種目が野球からサッカーへ変わったのです。野球をやるチーム編成では勝負にならない。「サッカーチームに変えようぜ」というのがトップの役割です。当然、トレーニング方法、選手の適性、セレクションからすべて変えなきゃならない。つまりはこれが、会社の大改造(CX)です。

木村 そうですね。産業構造が大転換していることは、みんな、頭ではわかっているんです。しかし、会社の主力は30年間野球をやってきた人たちです。彼らは本能的に抵抗する。自分の役割がなくなるから、表面的な「DXごっこ」に逃げちゃう。

冨山 サッカーで世界と戦わなきゃいけないのに「会社帰りにフットサルやろうぜ」という緩いレベルになっちゃっている(笑)。

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