日経Gooday

「酒税法において、ビールは麦芽の使用比率が50%以上と決まっています。麦芽を多く使うことでビール本来のおいしさが生まれるのですが、同時に麦芽に含まれる糖質も多くなります。ビール中の糖質はうま味でもあり、おいしさの一要素でもあるため、これまではその糖質をゼロにしてしまうのは難しいといわれてきました。一方、麦芽使用比率が少ない発泡酒や第三のビールの場合、糖質をゼロにしても麦芽以外の副原料で味作りができるのです」(廣政さん)

なるほど。糖質ゼロのビールを作るのが難しかったのは、麦芽の使用比率と使用できる材料に制約があるためだったのか。では糖質ゼロのビールを実現するにあたり、どんな部分に注力したのだろうか?

「糖質をゼロにすることにおいて、特に注力した点は2つあります。まず1つ目は、ビールの主原料となる麦芽の選定です。ビール作りにおける麦芽の役割は、麦芽に含まれる酵素の力で、高分子のでんぷんを、低分子の糖に変えることです(このプロセスを『糖化』という)」(廣政さん)

糖質をゼロにする仕組み

キリンビールの資料をもとに作成

この糖が酵母のエサとなり、アルコールが生成されるのだが、実は糖化の段階で大小さまざまな大きさの糖が存在しているのだという。

「小さな糖は酵母が残らず食べてくれますが、大きな糖はビール中に残ってしまいます。今回の開発にあたり、酵母が食べ残してしまうような大きな糖をどうすればなくせるかを考え、『酵母が食べ残すことがない小さい糖』に分解してくれる麦芽と最適な糖化条件を選定しました」(廣政さん)

この麦芽の選定にかかった時間は3年半。さまざまなタイプの麦芽を取り寄せ、分析、仮説、検証を繰り返しながら決定したという。

そして2つ目に注力したのは、アルコール発酵を行う酵母である。

「糖質ゼロを達成するには、麦芽の酵素によって通常よりも小さく分解された糖を、酵母が食べきることが条件となります。自社ビール酵母の中から、通常のビールに比べて厳しい管理をされた、糖をせっせと食べてくれる元気な酵母を厳選しました。発酵期間は通常のビールと同様ですが、データ分析を行いながら、酵母が糖を食べきる温度を調整しています」(廣政さん)

おいしさを追求してアルコール度数は「4%」

聞くほどに、ハイテク! そんな技術が生かされたビールが生まれるなんて、少し前では考えられなかった。

スーパーハイテクのたまものであることが分かったところで、やっぱり気になるのは「お味」である。ビール好きにおいしく飲んでもらうために、どんな工夫をしたのかを廣政さんに伺った。

「先ほどもお話ししましたが、ビールの糖質をうま味ととらえる方もいらっしゃいます。糖質ゼロはその一要素をなくすこと。ではどこにおいしさを持っていくのかと考えたとき、“一番搾り製法”は欠かせないと思いました。通常、ビールは一番搾りに加え、二番搾りも使います。これに対し、一番搾り製法とはビールの製造工程において、主原料の麦から最初に流れ出る一番搾りの麦汁だけで作ることを指します。これにより、素材の良さを最大限に生かした、雑味のない、澄んだ麦のうま味にあふれた味を実現できたのです」(廣政さん)

そして5年もの年月をかけてできあがったのが、「一番搾り 糖質ゼロ」である。アルコール度数は4%。「おいしさを追求した結果、4%にたどり着きました」と廣政さん。月に一度はビールを飲むというユーザーに事前調査を行った結果、「飲みやすい」「ちょうどいい」という回答が94%の方から得られたという。

さっそく、筆者も「一番搾り 糖質ゼロ」を飲んでみた。実は半信半疑な面もあったが、キリリッとした爽快感の中に麦芽本来のうま味を感じ、ほど良い飲みごたえが「ビールを飲んだ」という満足感を与えてくれる。糖質ゼロではない従来のビールと比べると、ややライトな飲み心地だが、糖質ゼロのハイボールに切り替えてから長い筆者にとってはちょうどいい。重すぎず、軽すぎずといったふうである。

後口の良さがまた秀逸。揚げ物や、脂の多い肉を食べる際に一緒に飲むと、箸が進みそうだ。

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