男性は5人に1人が被害?

就活でセクハラが減らないのはなぜだろうか。採用コンサルタントの谷出正直氏は「社員はOB・OG訪問要員として会社から学生獲得を命ぜられても、給与の査定のような見返りがないケースが多い。だから何らかの『メリット』を見いだそうとするからではないか」と分析する。

新型コロナの影響でOB・OG訪問や面接などをオンラインでするケースが増えたが、ここでも学生がセクハラと受け取る社員の行いがなくならない。谷出氏によれば「どんな部屋なの?」とウェブカメラで部屋を見せるよう強要したり、「ちょっと立ってみて」とスタイルを確認するため全身を見せるよう要求したりする事例があるという。

一般社団法人Voice Up Japan(VOJ)の山本和奈代表理事も、従来は対面によるボディータッチなどの被害が多かったが、最近は言葉を通じた不快な要求が目立つと指摘する。

連合が2019年にまとめた調査によると「就職活動中にセクシュアル・ハラスメントを受けたことがある」と答えた人は20代で17%だった。意外だったのは女性は13%だったのに対し、男性は21%と高かったことだ。

「彼女はいるのか」「男なのに何で事務職志望なの?」――。女性に対しては「食事やデートなどの執拗な誘い」が多いが、男性の場合は「性的な事実関係の質問」などが多い傾向があるようだ。質問する面接官にはセクハラの意識はなくても、学生からは「会社選びでマイナス要素になる」(都内私大に通う男性)と捉えられてしまう。

性的少数者(LGBTQ)へのセクハラも目立つ。日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンが実施した就活を経験したLGBTQに対する調査によると、ゲイを自認するある人は、ある人事担当者から「ゲイっぽいですね」「その気あるの?」と性的指向や性自認に対する質問が続き、不快な思いをしたという。

ある調査では日本でLGBTQに該当する人は8.9%。左利きの人やAB型の人と近い割合だという。企業側にはLGBTQに対する理解を示した採用活動も求められる。

対処法はない?

学生はセクハラにどのように対処すればよいだろうか。ディスコの武井房子上席研究員によると、対面では「夜間ではなく、昼間に会社内の施設で会う」「スカートではなく、パンツスーツを着用する」などの対応により、性的な誘いを未然に防げるという。

オンラインでは以下のような対応が望ましいと谷出氏は言う。(1)怪しいなと思ったら映像や音声を記録し、どんな被害にあったかメモを残しておく。(2)その上で大学のキャリアセンターや弁護士を通じて相談する。個人で企業側に言ってももみ消される可能性があるからだ。

もう一つは、性的な質問をされたその場で「それはどういう意味で聞いているのですか?」と聞き返すのも手だという。それでも収まらなかったら、「今日はこれで失礼します」と一方的に画面を閉じて接続を切ればいい。対面と違って追いかけられるリスクはない。

一方でこんな意見もある。対処方法を提示することで「対処方法を守っていないから性被害に遭う」など、被害者を非難する方向に進むことがある。VOJの山本代表理事は「被害者は悪くないし、気をつけていても誰にでも起こりうることだ」と訴える。

(企業報道部 鈴木洋介、サンローラ茉莉亜、橋本剛志)

[日経産業新聞 2020年10月7日付]

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