子育てし大県(たいけん)さがプロジェクト

――イクメンを増やすための佐賀県独自の取り組みというのはあるんでしょうか。

「『子育てし大県(たいけん)さがプロジェクト』という子育てを徹底的に応援しようというプロジェクトがあります。僕は知事になってから若い皆さん方に、『知事、子育てってつらいもんじゃいけないんだよね。子育てしたいと思わせてよ』って言われたんです。子育てしたい、から『子育てし大県』というプロジェクト名になって徹底的に子育てに合わせたような形、佐賀での子育てがいかに素晴らしいかっていう施策を徹底的にやりました」

「最近、マイナス1歳期からを対象にした男性への意識の啓発事業をやっています。私も佐賀に来て気付いたんですけれども、『子供って生まれてから育児が始まるもんだ』っていう意識があったわけです。でも実は妊娠している奥さんは大変な不安の中で10カ月くらいお腹に入れて大切に育てるわけでしょう。その時点から寄り添ってほしい。マイナス1歳から男性が育児参加をしてやっていけば女性も楽だし、あるべき姿なのではないのかなということで父子手帳を作りました」

佐賀につぐ熊本、福岡 トップ3は九州勢に

――今回のランキングは佐賀が1位、続いて熊本、福岡でした。トップ3が九州勢というのは素晴らしい結果だと思います。

「うれしかったですね。知事になってすぐ大分県の広瀬(勝貞)知事から『子育てのリーダーをやってくれ』と言われました。九州は子供はいっぱいいるけど男性の子育て参加率が低いということに直面していました。私と宮崎県知事、山口県知事の3人で妊婦ジャケットを着用し妊婦さんの大変さを自ら体感しました。このYoutube動画は3574万回再生されています。九州の人に見てもらおうと思って作ったんですけども、世界中で絶賛されました。大変でしたよ。スーパーでかがんでしょうゆを取ろうとしても取れなかった。そういう体験を男性がするととっても相互理解が深まると思います。九州男児のイメージが変わって、『女性を大切にするということが九州男児の誇りなんだ』って、みんなが思い始めたら、九州、かっこよくないですか」

――知事が実際に育休取って苦労されたのは10年以上前だと思うんですけど社会や職場の理解は進んでいるように感じますか。

「(私が育休取った)あの頃に比べたら格段に環境が良くなったと思います。逆に言えば15年前はもうあまりにもひどかったですね。そこが我が国がこんなに遅れているという原因だと思います。男性と女性を区別しない考え方というか。気をつけなければならないのは『女性はそんなに大変だから早く退社させよう』なんてだめです。一緒に男性も退社させるような環境であるからお互いの仕事もうまくいきます。女性は早く帰って男性が残業してるなんて姿だと、その社会は不正常だと思うんですよね。みんなが同じように同じような時間に帰れるような形で社会システムがセットされなければいけない。これからはそういった社会全体のあり方が問われるだろうと思っています」

いい仕事をするために必要

――イクメン力を上げるための課題はありますか。

山口 祥義(やまぐち・よしのり) 東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)入省。秋田県や鳥取県、長崎県などを経て、2015年佐賀県知事選に出馬し初当選。18年12月再選。

「まだまだ課題ありまくりです。たとえば私がその育児休暇を取った時も私は私なりに一生懸命やったんだけれども、妻からは冷たい視線もありました。『こんなに一生懸命やってるのになぜだろう』と思って気になって聞いたことがあります。妻からは『やっている感を出しすぎ』って言われました。最初はゴミ出しとか皿洗いでもいいと思うんですけれども、それで鼻高々になるんじゃなくて、当たり前の行動になるべきです」

「佐賀県はフィンランドとの交流が盛んでオリンピックのキャンプ地にもなっているんですけど、フィンランドはイクメンって言葉自体がもうないらしいです。そんなの当たり前すぎて。本当に子育ても含めて男女が共同していろんな社会を作っていくのが自然だと思うための自覚が我々の責務だと思っています。なにをやっていけばいいのか、と考えています。半分半分だから男女共同参画じゃなくて本当にいい仕事をするために必要だと思います」

(聞き手はながら日経パーソナリティー外村倫子、構成は村野孝直)

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