――コロナショックがありました。はじめの計画が予定通りに進まないといった影響はありましたか。
「いっぱいありました。今回のコラボでも、こういうコレクションでいきましょう、とイタリアで話したのが昨年(2019年)で、最後にイタリアに行ったのが今年2月のファッションウイークの時です。僕は初日に(別のブランドの)ショーを手掛けていて、初日は何の規制もなく、何千人も会場に来てすごいにぎわいでした。ところが数日後、ジョルジオ・アルマーニのショーが無観客になり、最終日は中止になった。ファッションウイークの会期中に一気に事態が動いたんです。初日から3日くらいたって日本に戻ってきましたが、帰国後は仕事の仕方が一気に変わってしまいました」
素材やフィッティングの感覚、リモートでは難しい
――コレクション制作がリモートワークに変わったんですね。
「ブルガリともそうですし、他の海外ブランドとの仕事もリモートでやっています。最初のうちは、リモートでも結構できそうだな、と思っていましたが、決断までのプロセスや、仕上がってきサンプルの吟味は、会うのとリモートとでは全然違う」

――どこが一番違いますか。
「洋服は素材感やフィット感を考えますよね。海外ブランドと仕事をする場合は何度か現地に行き、実際に着てみて、ここをもう少し詰めよう、この素材はちょっと違うな、と擦り合わせていきます。でもリモートでは素材やフィッティングの感覚が分かりません」
――メールでやり取りするにも、言葉を尽くしても伝えきれない難しさがありそうです。
「時間もそうですし、経費も結構かかるかもしれません。このコレクションもそうだったのですが、普通は1個でいいサンプルを2個つくって、1個を海外に送り、1個を手元に置いて、お互いにZoomで同じサンプルを見ながらやり取りをしました。逆に向こうで作ったものが大量に送られてきて、Zoomでミーティングすることもあります」
――仕上がったもののディテールが想定とは違うというケースもありますか。
「あります。でも、もしかしたら、その結果いいものになる可能性もある、と僕は思っているんですよ」

「今回のコレクションはブルガリ主導でできあがったものが多いんです。日本で形まで作ってサンプルを送ったバッグを例にあげると、以前なら僕がミラノに行ってブルガリの人と途中経過を一緒に確認して、ジッパーはこっちの方がいいんじゃない、といったアイデアを出し合います。でも、今回はそうしたことができなかった。商品に盛り込むフラグメントの感性の分量みたいなものを、ブルガリのあんばいで決めてもらった感じ。僕はそれも面白い、と思います。ブルガリのイメージを大切にしたほうがいいのです」

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