筆者イチオシのポテチは、昔も今も「コンソメパンチ」

あのやみつきになる味の秘密は、「ウメの酸味による味の切れに」あったのだ。『大辞林』(三省堂)から「パンチ」の意味を引用すると、「ぴりっとしたところがあり,人に痛快な印象を与える力」とある。まさにこの「ぴりっと」が「ウメ」だったのだ。

だが、ここで新たな疑問が湧いてくる。筆者のフランス人配偶者はサラダやポテトチップスにはビネガーをどばどばかけるのに、同じように酸っぱいウメは苦手だ。そしておそらく多くのフランス人もウメにはなじみがない印象を受ける。日本人には、ウメに対する何か特有の味覚のようなものがあるのだろうか?

そこで、在フランス日本大使館の元公邸料理人、日仏の食文化に精通する和食料理人の有川海渡さんに聞いてみた。有川さんは「確かにフランスでは食材としてウメを使うことは少なかったです。梅干しは和食では主にイワシやサバなどの青魚に使うことが多く、梅干しの酸味は青魚の独特な匂いとの相性がとてもよいので、青魚特有の臭みもとれ、食べやすくなります。味が強い、香りが強いものにウメは相性が良いのです」と話してくれた。

さらにこう続ける。「私は五味(甘み、塩味、酸味、苦味、うま味)がバランスよく入る料理を作るよう、心がけています。例えば『ぬか漬け』。野菜(甘み)、塩(塩味)、発酵による酸味、コンブなどのだし(うま味)、それらに加えてトウガラシ(辛み)というように色々なものが入っているけれど、ただ塩辛いわけでも酸っぱいわけでも辛いわけでもなく、色々な味がバランスよく調うことによって、一つの味を形作り、それがおいしいのです」。

なるほど、コンソメ の「うま味」だけでいいというものではない、大切なのは味の「バランス」ということか。日本人とウメの関係については、「島国で魚を食べる文化があった日本人が、保存食で作っておける梅干しを合わせることは、長い歴史の中で必然だったのではないでしょうか。ウメの味は日本人のDNAに刻まれているものの一つで、魚に限らず、梅干しを隠し味に使うことで、日本人が本能的に安心感を感じるのではないかと思います」(有川さん)。日本人が脈々と受け継いできた、島国ならではの「魚×ウメ」の食文化が、日本人のウメ好きにつながっているのだろう。

さて、ここまでコンソメ味について考えていると、フランスにないコンソメ味のポテチが無性に恋しくなるのは想像に難くない。そこで筆者は、パリの自宅の小さなキッチンで、自家製コンソメパンチを作ってみることにした。

自家製コンソメパンチには、「ゆかり」のウメフレーバーが隠し味に

コンソメパウダーは、ブイヨンのキューブを削ればいいのだが、問題はウメパウダーだ。梅干しそのものはあるけれど……。ふと思い付いたのが、ふりかけの「ゆかり」。成分表を見ると、ウメそのものではないが「梅酢」が入っている。ブイヨンキューブを削って味見すると、これは予想通り、慣れ親しんだ洋風だしの味だ。そこにゆかりをはらりと加えてみたところ、たしかに味に抜群のキレが!! やめられない、止まらない、コンソメパンチ風パウダーが出来上がった。

フランスでもコロナ禍の巣ごもり生活が続いているが、自作のコンソメ味のポテチで当分楽しく元気に過ごせそうだ。

(*記事内のフランス語のアクセント記号は表示していません)

(パリ在住ライター ユイじょり)

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