さらに深刻なのは正社員より弱い立場の派遣で働く人やアルバイトなどの非正規雇用といわれる人たちよ。総務省の調査では8月の国内全体の雇用者のうち、非正規の職員・従業員数は120万人減っているの。コロナ禍以外の要因による解雇や自己都合の退職なども含まれているけど、減少数は6月から3カ月続けて100万人を超えているわ。飲食やサービス業で働く非正規の人は多いから、さらに減る可能性は大きいわ。

からすけ 働く人を増やすには、経済活動を活発にすればいいんだよね。

イチ子 その通り。国内でお金が回る旅行を増やすのも効果があるわね。政府は7月から国内旅行の代金を半分まで補助する「Go To トラベル」事業を始めたわ。新型コロナの感染が拡大していた東京への旅行や都内在住者の旅行は対象外になっていたけれど、10月からは東京も加わったわ。飲食業を支援する「Go To イート」も始まるわね。

9月19日からは新型コロナの感染拡大防止で求めてきたイベントの開催制限を緩和したわ。プロ野球やJリーグ、大規模コンサートといった1万人超のイベントについては5千人の上限を撤廃して、収容人数の50%まで入場できるようにしたの。観光地や繁華街の人出も増加傾向にあり、徐々に経済活動が回復してきているようね。

からすけ これから雇用は増えていくのかな。

イチ子 そう簡単にはいかないわ。例えば飲食店。まだ新型コロナの感染収束の兆しは見えないから、密を避けるために席数を減らすなどで来店客を制限している店も多いの。お客さんも外食を控える人がいるわ。来店客数が新型コロナ前の水準に回復している店は少なく、この環境では新たに人を雇おうという気にはなりにくいわね。

信用調査会社によると、全国の新型コロナ関連倒産は500件を超えており、事業停止や休廃業の選択を迫られるケースが増えることも予想されるというわ。専門家は景気回復が見通せないので、企業が新たな雇用を抑制する動きが一段と高まるとみているの。

からすけ 非正規で働く人たちを中心に厳しい環境が続きそうなんだね。企業の経営がさらに悪化する前に新型コロナが収束してくれるといいな。

キーワード

雇用調整助成金

不況時の解雇防止を目的に、企業が払う休業手当の一部を補助する制度。本来の助成率は大企業が2分の1、中小企業は3分の2だが、4月から特例でそれぞれ最大4分の3、同100%に拡充した。1人当たりの支給上限額も日額8330円から1万5000円に引き上げた。

完全失業率
労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち完全失業者(職がなく求職活動をしている人)が占める割合。数値が低いほど雇用は安定しており、逆に数値が高いほど就職を希望している人が仕事に就けていない状況を表す。総務省が毎月、発表する。
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灘中学校・高等学校・藪本勝治先生の話


高校の教科書の定番教材、芥川龍之介の「羅生門」は災害や飢饉(ききん)で職を失った「下人」が盗人へと変容していく姿を描いた小説です。生活に窮して正義感がゆがみ、犯罪に走ったと読むのが普通ですが、ある生徒は授業後、別の読み方を提案してくれました。「下人を追い詰めたのは飢えではなく、孤独だったのではないか」と。一理ある意見だと思います。
働くということは、人と関わり、人に必要とされるということです。もちろん家事も育児も同じ。私たちが働くことで得られるのはお金以上に社会とのつながりなのです。それを失った下人にもし、苦しみを分かちあえる友人や家族がいたら、盗人にならずにすんだのではないか、と思われてなりません。出口の見えない苦境でこそ人と人とのつながりが大切になる。不朽の名作からそんな教訓を読み取ることもできるのではないでしょうか。
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