2020/11/1
「日産キックス」の最小回転半径は5.1m。コンパクトSUVクラスではトップレベルの小回り性を誇る

売りやすいに違いない……が

ショートホイールベースかつ地上高の大きいコンパクトSUVに、強力レスポンスのe-POWERを組み合わせるのは、じつは簡単ではない。今回の開発でも、当初の試作車は加減速ごとに大揺れするピッチングに悩んだらしい。

そうしたエピソードを聞くと、e-POWERをワンペダルドライブ可能なSモードにして遠慮なく踏んでも、水平姿勢を崩さないまま、ドーンと蹴り出してくれる今のキックスには素直に感心する。さらに、山坂道でコーナリングに挑んでもアゴを出すような兆候はみじんもない。まあ、長い上り坂などで貯蔵電力が尽きると、ただの1.2リッター車になってしまう瞬間があるが、それでもこの重量なら控えめながらも普通には走る。

「キックス」の最低地上高は170mm。コンパクトハッチバック「ノートe-POWER X」(FF車)の130mmよりも40mm高い

初代ジュークと比較すれば、やはり後席と荷室において、南米やアジアでファミリーカーとして受け入れられているキックスが光る。後席も荷室も空間はクラストップレベルだ。荷室にも特別な工夫はなにも用意されないが、素直に四角くて大きいのはうれしい。このような高い実用性に自慢のe-POWERが組み合わせられて、プロパイロットでの半自動運転も電動車ならよりスムーズ……となれば、キックスは日本でも売りやすい商品であることは間違いない。

空間的な広さがセリングポイントの後席。600mmのニールームと85mmのヘッドクリアランスを誇る
40:60分割可倒式の後席を倒した状態。積載スペースは拡大できるが、フロアはフルフラットにはならない

残されたネガがあるとすれば、基本的に1種類しかないグレードが300万円近い価格であることと、国産SUVながら4WDの用意がないことだ。ただ、充実した標準装備を差し引けば、実質的には割高ではないし、これまでの日産の例でいえば、今後はいろんな特別仕様車が追加されて、気がつくとけっこう膨大なグレード数になっている可能性が高い。4WDについても、ノートe-POWERには用意があるから、遠からずキックスに追加されても不思議はない。

……とはいえ、コアな日産ファンとしては、世界のトレンドセッターとなり、欧州ではいまだに一目置かれているジュークへの誇らしい気持ちの行き場がほしいのだ。キックスはキックスで日本発売を歓迎すべき魅力的な商品といっていいが、「もし、今のトヨタが日産の立場なら、もったいぶらずに、キックスもジュークも両方売るだろうな」とないものねだりをしたくなったりもする。

(ライター 佐野弘宗)

■テスト車のデータ
日産キックスX ツートーンインテリアエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4290×1760×1610mm
ホイールベース:2620mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/3600-5200rpm
モーター最高出力:129PS(95kW)/4000-8992rpm
モーター最大トルク:260N・m(26.5kgf・m)/500-3008rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91V/(後)205/55R17 91V(ヨコハマ・ブルーアースE70)
燃費:21.6km/リッター(WLTCモード)/30.0km/リッター(JC08モード)
価格:286万9900円/テスト車=340万0674円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムホライズンオレンジ×ピュアブラック>(8万2500円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き>+インテリジェントルームミラー(6万9300円)/ ※以下、販売店オプション ウインドーはっ水12カ月<フロントウインドー+フロントドアガラスはっ水処理>(1万0285円)/ナビレコパック<MM319D-L>+ETC2.0(30万8629円)/キッキングプレート(3万3660円)/フロアカーペット<エクセレント/オレンジ>(2万6400円)

[webCG 2020年9月30日の記事を再構成]

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