職場のやっかいな女性に困っています著述家、湯山玲子さん

著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」「女ひとり寿司」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。
著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」「女ひとり寿司」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

パートで働いている職場にやっかいな女性がいます。会社の指示に従わず自分たちでルールを決め、楽をするために恫喝(どうかつ)まがいの言動で同僚に仕事を押し付けます。会社も黙認して何もせず。穏やかに過ごすにはどうすればいいですか。(大阪府・40代・女性)

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軍事外交戦略でテッパンと呼ばれているルールがあるのを知っていますか? いわれのない攻撃を受けたら迎撃し、相手の攻撃が止まれば反撃をストップ、その後、きちんと和平にもちこむ、というものです。

現実には攻撃側にはそれなりの理由が付いていたりして大変に難しいのですが、このルール、日常生活においても、他者からの「理不尽な暴力、言いがかり」に対するオトナの態度だと思っています。

質問を見る限り、相談者氏はやっかいな女性から直接の被害には遭っていません。もし、恫喝まがいの方法で仕事を押しつけられた当事者だったならば、前述のルールにて、会社や本人と渡り合うか(それはそれでいろんな戦術がありますよ!)、その職場を去るかの実効的な対処をするだけの話です。

さて、なぜに「心を乱される」のか、といえば、そこには相談者氏自身のマジメさ、正義感が、問題の女性の職場での正しくないふるまいを、見過ごしておけないからなのでは? 学校なら褒められるべき美徳ですが、現実社会でそれらを物事の判断基準とすると、すべてのことに腹を立て、人生のほとんどを「私は正しいのに……」と不快な思いで過ごしかねません。

コロナ禍で「自粛警察」という心理状態がクローズアップされましたが、その問題行為も動機は「正義感」でした。そして相談者氏は、その女性が大嫌いなのだ、という自分の感情を自覚した方がいい。人を嫌う感情はよくないことと抑圧されているだけに、その気持ちを自覚しないまま、正義という錦の御旗で相手を糾弾したいという想いも垣間見られます。

組織には、必ずといっていいほど現場の空気を悪くする困ったチャンが出現します。しかし、仕事の出来高に支障がなければ(困ったチャンが自分ルールを勝手に作っても)、問題にされません。会社はマジメや正義感の判断基準では動かず、リアルには売上高やそこにつながる実害があってこそ動くのです。

彼女とは距離を取るけれど、自分に理不尽なことを押しつけてきたらただじゃおかないぞ、という覚悟を持つ。この非常にスッキリしない、グレーゾーンを保っていける心の強さは、ある意味、オトナの証しでもあります。

[NIKKEIプラス1 2020年10月3日付]


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