持病・挫折…そんな自分たちが起業家に N高で転機

2020/10/28
N高の授業イメージ=角川ドワンゴ学園提供
N高の授業イメージ=角川ドワンゴ学園提供

2016年に誕生した通信制高校のN高校。角川グループの学校法人、角川ドワンゴ学園が運営する「ネット高校」の生徒数は年々増加して1万5千人を突破した。デジタルをフル活用して多様な人材を受け入れる。20年には東京大学への合格者も出て話題になったが、高校生起業家も次々飛び出している。ネット高発ベンチャーの素顔に迫った。

不器用な生徒、皮膚の病×ファッションで起業

「勉強は嫌いだったけど、この学校にいると未来がわかりやすく見えてくる」。高校3年生の倉田速音さんは、ファッション関連の株式会社「HAYATO KURATA」を設立、8月に同校は3件目の起業案件として公表した。紫外線を気にせず、おしゃれのできるUVカットの洋服を提供するという。

都内で生まれ育った倉田さんは小学校5年生の時に皮膚の病「尋常性白斑」を発症、強い紫外線を浴びると、炎症を起こしてやけどのような症状になる疾患に苦しんできた。勉強には熱が入らず、中学3年間もダラダラ過ごした。高校受験を控えた頃、ドワンゴの主催するイベント「ニコニコ超会議」で、N高のパンフレットが目に入った。「面白そうな学校。ここにいけば少しは成長できるかも」と思い、N高の門をたたいた。

ネット高校と言われるが、リアルな学びの場もある。倉田さんはJR新宿駅から徒歩10分のところにあるN高代々木キャンパスの通学コースに入った。ここで若山修也という教師と出会った。大学卒業後に香港の日本人学校で2年間英語を教え、N高に入ったばかりの20代の若手教員。30人弱のクラス担任が若山先生だった。倉田さんの印象を尋ねると、「不器用で自分に自信のないというタイプの生徒だったが、何かにチャレンジしたいという気持ちは強かった」という。

N高では、自らやりたいことをみつけ、課題解決に取り組む「プロジェクトN」という授業がある。2人で課題探しにあたった。尋常性白斑に悩んできた倉田さんは「国内の患者は100万人以上。若い人にも理解してもらいたい」と若年層向けの患者の会の設立を思いついた。しかし、色々調べてみると患者の会に関心を示すのは高齢者ばかり。「僕には無理」と断念した。

N高の倉田速音さんがデザインした服はUVカット素材を使い、長めの袖やフードなどで紫外線をさえぎる=角川ドワンゴ学園提供

「何かできないか」と互いにぶつかり合いながら、何日も一緒に悩んだ。そんな時、倉田さんが「服には興味があるけど」とふと漏らした。「だったら、君の皮膚の病とファッションを掛け合わせてみれば」と若山先生は助言した。

同高にはプロジェクトNの次のステップとして、「N高マイプロジェクト」がある。NPO法人のカタリバと協力し、自身の気になることをテーマに自らプロジェクトを立ち上げ、「全国高校生マイプロジェクトアワード」への出場を目指すという内容だ。倉田さんはマイプロジェクトに参加し、それをテコにN高の起業部の審査にもパスして2期生として入部した。

N高起業部というのは、通常の部活というよりは、大学のゼミのような組織だ。18年に設立され、現在メンバーは22人。事業に詳しい講師がビジネスモデル構築や事業計画書の作成のノウハウなどを指導し、実際にメンバーは起業を目指す。実業家の堀江貴文氏などが審査委員としてアドバイスしたこともある。学校側は年間最大1千万円の活動費を支援に充てている。

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