日経ナショナル ジオグラフィック社

単為生殖できない哺乳類はマイナーな存在

単為生殖は、動物がより単純なものだったはるか昔から存在したはずだが、脊椎動物のような複雑な動物にとっては、逆境に陥った種の最終手段の1つになったと考えられている。これが、砂漠や島に生息する種に単為生殖が非常に多い理由かもしれない。

単為生殖をすることが知られている動物の大半は、ミツバチ、スズメバチ、アリ、アブラムシといった小型の無脊椎動物だ。彼らは有性生殖と単為生殖を切り替えることができる。

脊椎動物でも80種以上で確認されており、その約半数が魚か爬虫類だ。とはいえサメ、ヘビ、大型のトカゲなどの複雑な脊椎動物が、単為生殖に頼ることはめったにない。だからこそ科学者たち当初、レオニーなどの例に困惑した。

野生動物は単為生殖で生まれた子どもかどうかを確認するのは難しい。そのため、ある動物が単為生殖をした「初」の事例は、飼育下で確認されることが多い。いずれにせよ、脊椎動物の「処女懐胎」は、野生下だろうと飼育下だろうと、その動物にとって普通でない条件により引き起こされる珍しい現象だ。

一方、哺乳類では、単為生殖で繁殖する動物は知られていない。哺乳類の遺伝子には、母親由来か父親由来かを示すラベルがあるからだ。これを「ゲノム刷り込み(インプリンティング)」という。

哺乳類の特定の遺伝子では、どちらの親のものが発現するかが決まっている。ゆえに、親がどちらかの性だけだと全く発現しない遺伝子があり、子は生存できない。単為生殖できない哺乳類は、グループとしてみれば実にマイナーな存在だ。ただし、マウスなどのいくつかの哺乳類では、単為生殖を誘発する実験に成功している。

単独での生き残り戦略

非常に珍しいが、単為生殖でのみ繁殖する動物もいる。その1つは、北米の砂漠に生息するハシリトカゲの一種で、なんと全員メスだという。

ある種の昆虫や両生類、扁形(へんけい)動物では、精子が単為生殖の引き金となる。精子が卵子に侵入すると、単為生殖のプロセスが始まるが、精子はその後退化し、母親由来の染色体のみが残る。この場合、精子は卵の発生を誘発するだけであり、遺伝子は子に受け継がれない。

単為生殖は、交尾相手を見つけるのにエネルギーを費やすことなく、自分の遺伝子を伝えることを可能にする。そのため困難な状況においては種の存続を助ける。例えば1匹のメスのコモドオオトカゲが、他の個体が生息しない島に上陸した場合でも、単為生殖により単体で群れを生み出すことすら可能かもしれないのだ。

しかし、このようにして増えたコモドドラゴン母娘は、遺伝的多様性に乏しく、病気や環境の変化に対して脆弱だろう。例えば米ニューメキシコ州には、実際にそのようなハシリトカゲのメスの群れがいる。

オスとメスの2つの個体がそろわないと子を残せない有性生殖より、1つの個体だけで済む単為生殖のほうが、数を増やすには効率がよい。有性生殖か単為生殖かは、多様性と量のどちらを増やすのかという問題ともいえる。

(文 CORRYN WETZEL、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年9月18日付の記事を再構成]