哺乳類は少数派 メスだけで命つなぐ単為生殖の不思議

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

孵化したばかりのコモドオオトカゲが木に登る。インドネシア、コモド国立公園で撮影。コモドオオトカゲは、単為生殖による「処女懐胎」が可能な数少ない脊椎動物の1つだ(PHOTOGRAPH BY STEFANO UNTERTHINER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

大半の動物は、オスとメスが交配して繁殖する。だが、一部の動物はその有性生殖に際し、メスだけでも子を残せる。いわば処女懐胎だ。これは「単為生殖」と呼ばれ、ミツバチからガラガラヘビまで様々な生物で例がある。

例えば2016年、オーストラリアのリーフHQ水族館で飼われているトラフザメの「レオニー」が飼育員を驚かせた。数年間オスとの接触がなく、他のメスと一緒に飼われていたにもかかわらず、産んだ卵から3匹の子サメが誕生したからだ。

12年には、米ルイビル動物園でアミメニシキヘビの「セルマ」が6つの卵を産み、健康な子が生まれた。セルマはオスを見たことさえなかった。06年には英チェスター動物園でコモドオオトカゲの「フローラ」が同様の離れ業をやってのけ、飼育員を当惑させた。

実はいろいろある単為生殖

通常、細胞には染色体という遺伝子の入れ物が2本ずつある。だが、精子と卵子は特殊で、1本ずつしかない。受精後に2本になるためだ。しかし単為生殖の場合、通常は精子から提供されるはずの遺伝子を、別の方法で卵子が埋め合わせる。そのパターンも、実はいろいろある。

染色体が2本から1本に減って、精子と卵子ができるプロセスは減数分裂という。オスで精子ができるときは、単純に同じものが2つできあがるのに対し、メスでは分裂したうちの1つしか卵子にならない。余ったほうの小さな細胞は極体と呼ばれる。

極体は通常、受精に関与しないが、極体と卵子が融合して子ができることがある。これを「オートミクシス(automixis、自家生殖)」という(「auto」はラテン語で「自分で」という意味)。

オートミクシスはサメなどで記録がある。なお、オートミクシスでは母親の遺伝子がわずかに組み換わるため、生まれた子は母親の遺伝子のみを受け継ぐとはいえクローンではない。

一方、減数分裂を経ずに、母親の染色体を2本もつ子ができるケースもある。この場合、遺伝子をシャッフルする減数分裂をまったく経ないため、生まれる子は親と全く同じ遺伝子を持つクローンになる。遺伝子のコピーアンドペーストだ。この方式による単為生殖は、植物で多く見られ、「アポミクシス(apomixis、無融合生殖)」と呼ばれる。

母親とまったく同じ遺伝子だから、このアポミクシスによって生まれた子は、当然メスになる。だが驚くべきことに、アブラムシでは、アポミクシスでオスが生まれる。どういうことだろうか?

アブラムシでは「XX」や「XY」というような染色体の組みあわせではなく、その本数によって性別が決まる。メスはX染色体が2本で、オスは1本。そう、子がX染色体を1本捨ててオスになるのだ。ちなみに、こうして生まれたオスには繁殖力があるが、X染色体を含む精子しか作れないため、その子はすべてメスになる。

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