2020/10/5

想定超える「アンバサダー効果」

そもそも同社が大坂選手をアンバサダーに起用したのは18年8月。その契約直後の9月に全米オープンで初優勝するという、同社にとってはまたとない幸運に恵まれた。

その時に着けていた初代「なおみモデル」は、黒とゴールドの組み合わせが力強い印象を与える「エコ・ドライブ Bluetooth」。光発電エコ・ドライブ搭載でスマートフォンとリンクする、ユニセックスデザインのアナログ腕時計だ。当時の大会で着ていた黒のウエアとも絶妙にマッチ。発売直後から数カ月間はメーカー在庫が品薄状態となり、18年末に再出荷した経緯がある。エコドライブシリーズでは最も売れたモデルになっている。

2018年の全米オープンで着けたモデル エコ・ドライブ Bluetooth BZ4006-01E ケース:40.5mm、スーパーチタニウム(純チタニウムに表面硬化技術デュラテクトを施した独自素材)、ベゼルのみデュラテクトGOLD 10気圧防水 駆動装置:光発電エコ・ドライブ電波時計 税別価格:8万円
2019年の全豪オープンで着けたモデル「エコ・ドライブ Bluetooth BZ4004-06E」は限定1000本が即完売した

続いて19年全豪オープンではオレンジストラップの「エコ・ドライブ Bluetooth」を装着。限定1000本があっという間に完売した。ちなみにこの大会は、海のプラスチックごみをリサイクルした素材でつくったテニスウエアや、優勝翌日のフォトセッションで着たドレスも注目され、ファッションアイコンとしての「なおみ旋風」が巻き起こる起点にもなった。

いずれの時計もゴージャスさよりスポーティーでパワフルな印象を与えるデザイン。男女兼用で着ける人を選ばない。なおみモデルによってシチズンブランドを知ったという20代女性会社員は「大坂選手のまっすぐな姿勢に共感している。その思いは時計やブランドに投影されている気がするので、シチズンに親しみがわく」と話す。

消費者も動かす「共感力」に期待

今回の全米オープンで、人種差別への抗議を、被害者の名前が入った黒いマスクによって示した大坂選手。その真摯な姿勢は米国内外で大きな共感を呼んだ。確かに大坂選手には、ファッショナブルなだけでなく、真っすぐで力強い意志を想起させるデザインもよく似合う。そして、そうしたデザインのアイテムと大坂選手がマッチングされた時、共感力はいや増すようだ。

シチズン時計が期待していたのは、まさにこの「共感力」だ。これまでも時計ブランド各社は世界各国で様々な著名アンバサダーを起用してきた。彼女や彼に期待するのは、ラグジュアリーさや知性の表現など人それぞれだ。

だが、ブランドのCSR(社会的責任)やダイバーシティへの取り組みが問われるようになった今、アンバサダーには単にイメージや世界観の伝道師という役回りだけでなく、社会的視点も含めてブランド価値を高め、伝え、消費者の共感を呼び起こす、より深い「説得力」も求められつつある。大坂選手は、こうした新時代のアンバサダーの代表選手に名乗りをあげたわけで、彼女を起用したシチズン時計も見事なサービスエースを奪ったといえる。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)


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