取締役のスキル、企業が開示 マトリクスで一目瞭然

2020/10/6
資生堂は6つのスキルで取締役の特徴を明示(株主総会の招集通知の一部)
資生堂は6つのスキルで取締役の特徴を明示(株主総会の招集通知の一部)

上場企業が取締役の専門性やスキルをマトリクス図で紹介する動きが広がっている。企業統治(コーポレートガバナンス)の強化を目指し、女性や外国人などダイバーシティ(多様性)への配慮や全体としてバランスのとれた運営が求められているからだ。

資生堂は2020年の株主総会の招集通知で、役員(取締役と監査役)のスキルマトリクスを紹介した。「取締役会の多様性と必要なスキルをメンバー間で押さえていることを理解してもらうため」と同社は説明する。

取締役8人のうち女性は3人。マトリクスを見ると、社外取締役の石倉洋子氏と大石佳能子氏は「グローバル経営・事業戦略」「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の2分野に◆が付いている。生え抜きで今年から取締役となった鈴木ゆかり氏は「グローバル経営・事業戦略」と「マーケティング」関連に強みを持つことがわかる。

社外役員のみスキルマトリクスを開示したのは三井物産。社外取締役5人のうち3人が女性で、それぞれの専門分野が「企業経営」「法律」「財務会計」と分散する。「当社が社外役員に期待する役割を理解してもらいたい」(三井物産)

専門性を開示するのは女性活用をアピールするためではない。女性取締役がいる企業ではジェンダー平等の実現や年齢、国籍など様々なダイバーシティを考慮する実務が定着している。「女性であるという理由だけで登用していない」(資生堂)。取締役のスキルや経験、視点のバランスも考え、あくまで本人の人格や識見を見込んでの選任であることを示している。

株式市場で話題となったのは将来の取締役候補である執行役員のスキルも開示した企業があったことだ。

キリンホールディングス(HD)は取締役に加え、執行役員のスキルマトリクスも今年の株主総会で示した。8人いる執行役員で紅一点の坪井純子氏は全9項目のスキルのうち「ESG・サステナビリティ」と「ブランド戦略・マーケティング営業」の観点で選ばれた。

キリンHD執行役員のマトリクス

スキルの開示により、足りていない分野が一目瞭然となる。社外取締役の数が重視される取締役会に対し、社内幹部である執行役員のスキル開示は、社内の多様性拡大を促すことにつながりそうだ。

欧米では一般的だったスキルマトリクスの公表が日本で活発になったのは今年から。社外取締役が増え、経営陣の監督という取締役会本来の役割がクローズアップされ始めたことが背景にある。

伝統的な日本企業の取締役会は内部昇格の男性で固める傾向があった。ガバナンス助言会社のプロネッド(東京・港)が7月1日時点で東京証券取引所1部上場の約2170社を集計したところ、女性取締役(社内・社外)は1354人と昨年比2割増えた。こうした取締役会の質的な変化が企業のスキルマトリクス策定を後押ししている。

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