花王、非濃縮の液体洗剤「アタック3X」 コスパ重視

日経クロストレンド

9月5日に発売した「アタック3X」。参考小売価格は本体330円(税込み)、詰替300円前後(同)
9月5日に発売した「アタック3X」。参考小売価格は本体330円(税込み)、詰替300円前後(同)

花王は9月5日に新しい衣料用液体洗剤「アタック3X」を発売した。19年にアタックブランドを1本化して発売した「アタックZERO」に対し、コスパ重視の層がターゲット。アタックZEROで上昇したブランドイメージの有効活用で、競合ひしめく低価格帯でユーザー層の拡大を目指す。

ブランドの新しいステージで裾野拡大

花王の「アタック 3X」は非濃縮タイプの液体洗剤で、洗濯洗剤に対する3大ニーズ「抗菌」「消臭」「洗浄」に対する効果を前面に押し出す。菌の増殖を防ぎ、部屋干しでも生乾き臭を防ぐとともに、皮脂や食べ物の汚れ、汗や靴下などのしつこい臭いもしっかり落とせるという。これまではプラスイオンによる抗菌力とマイナスイオンによる洗浄力は両立しなかったが、技術革新でクリアしたという。

アタックといえば、19年に環境負荷を減らすサステナブル(持続可能)な基剤「バイオIOS」を使用した「アタックZERO」にブランドを一本化したばかり。用途別に展開していた複数の濃縮タイプの製品を廃止し、ZEROに集約した。高機能性とワンハンドプッシュボトルの新規性をイケメン5人が出演する斬新なCMで訴求し、それまでの「古い」というブランドイメージをガラリと変えた。19年4月(発売時)~20年9月中旬までの累計出荷本数は、1億5000万本以上(本体ボトル換算)を記録した。

ブランド一本化から早々の新製品投入だが、実は「計画通り」だったという。衣料用洗濯洗剤はジェルボールタイプや濃縮タイプの高価格帯商品と、非濃縮タイプの液体洗剤が主流の低価格帯商品に大きく2分される。花王では前者を「プレミアム」、後者を「汎用」と2つのセグメントに分ける。購買者の割合は、プレミアムが3割で汎用が5割と、汎用ユーザーが大半を占める。

アタックZEROはプレミアムに属し、いくらユーザーから支持されてもシェアの大きい汎用をカバーできなければ競合会社と渡り合えない。ところが汎用市場はアタック最大のライバルである「アリエール」(P&G)が非常に強い。花王としては、何としても汎用市場に食い込みたいのだ。

花王によるとプレミアムユーザーは洗濯に関する悩みを解消するために良いものを探して使おうとするが、汎用ユーザーは洗濯の悩みはあるものの、日常使いであることを考慮してコスパの良さを重視するという。積極的にトライアルをする「関与度」も低いため、使い慣れた製品を選び続ける傾向がプレミアムユーザーよりも強いのが特徴だ。

そこでアタックブランドが新たなステージに移行したタイミングで、アタック ZEROの技術を取り入れた新製品を投入。それによって汎用ユーザーを取り込み、顧客の拡大を目指すことを、アタックZEROへのリブランディング段階で計画していたという。

ZEROのブランド戦略について、花王のファブリックケア事業部ブランドマネジャーの野村由紀氏は、「以前は『古い』というブランドイメージを持たれていたが、アタックZERO発売を機に、これまで完全にアリエールの後じんを拝していた『新しい』『先進的な提案』というイメージが逆転するほどになった。コミュニケーションの大勝利と言える」と、手応えを強調する。

製品情報を意識するプレミアムユーザーに比べ、汎用ユーザーはもっと分かりやすい宣伝・広告を好むという。そこで3Xのコミュニケーションは、ZEROで浸透したCMの枠組みを活用したスピンオフとして設計した。その内容は、ZEROの「#洗濯愛してる会」にも登場した俳優の菅田将暉が、芸人トリオ・ハナコの3人から3つの機能性をアピールされるというもの。CMに連続性を持たせることで、アタックZEROのDNAを引き継いだ製品であることをさりげなくうかがわせる。「今のアタックの高いブランドパワーをいかに有効活用するか、いかに関与度の低いユーザーに伝えるかを考えた」と、同社ファブリックケア事業部の榊原淳太氏は語る。

アタックZERO「#洗濯愛してる会」のスピンオフとしてCMを展開。人気芸人のハナコを起用した

発売後の手応えは上々だ。野村氏によると、日別のPOS(販売時点情報管理)データで競合アリエールとシェアが逆転することもあるという。既存の「アタック抗菌EXスーパークリアジェル」と3Xを合わせて、シェアでアリエールに並ぶことを目標としているが、初週目標はすでに達成できたとのこと。「ZEROのCMが非常に浸透していることがプラスとなって、消費者への伝達が速いと感じる。想定以上の認知の上がり方だ」と野村氏。

廃版の反省を生かして既存製品も併売

今回3Xを発売するに当たり、ZEROのときのように既存の製品(アタック 抗菌EXスーパークリアジェル)を廃版にはしなかった。ZEROへのブランド一本化で、製造終了となった「アタックNeo 抗菌EX Wパワー」を強く支援するファンが離脱してしまうという苦い経験があるからだ。「ZEROへのスイッチングはWパワーのユーザーが最も多く、その9割はZEROを好意的に評価しているが、一部のファンを失ってしまった事実については反省している」(野村氏)。

だが、抗菌力に定評のあったWパワーの人気が根強いことが分かり、抗菌力に特化して洗剤を選ぶ層が多いことを明確に把握できた。20年5月にはZEROも抗菌力をプラスしてリニューアルし、生乾き臭にも対応した。

3Xはクリアジェルと同じ液体洗剤だが、ZEROで使用しているのと同じ酵素を用い、抗菌力と洗浄力を両立させた。「効果が最強なのはZEROだが、高価格帯ということもあり広くはリーチできない。その点、3Xはコスパが最も良い」(野村氏)。クリアジェルを併売しつつ、コミュニケーションは3Xを前面に押し出す。ZEROが築いた新生アタックのブランド資産を、3Xでもうまく引き継げるかどうかがポイントとなるだろう。

(ライター 北川聖恵)

[日経クロストレンド 2020年9月24日の記事を再構成]

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