多くの学生は内定を通知した1カ月後になんらかの返事をくれた。中には2月に内定を出した学生が大手企業の内定を蹴って8月に承諾してくれたケースもあったという。企業側に焦らされずに学生自身が主体性をもって承諾を決めたのであれば想定外の辞退は防げそうだ。

ナイ内定学生も

複数の内定承諾企業を吟味し続ける学生がいる一方で、まだ内定がない学生も例年以上に存在感を増している。

「ホテル業界に行きたかったが採用中止が多くて……」。青山学院大学4年の女子学生はまだ内定がない。就活を始めたのは3月。周りの学生に出遅れた。新型コロナの感染拡大で学校への立ち入りが制限され、友達と情報交換する機会も奪われた。

これまで40社にエントリーしたが全滅。接客業に就きたいが、コロナ禍で採用を中止したり、採用人数を絞り込んだりする企業が多かった。「奨学金を返さなきゃいけないので、卒業延期や留年はできない。なんとしても今年内定をとらなくては」。焦りは募るばかりだ。

リクルートキャリアがまとめた9月1日時点の内定率は85%と前年同月比8.7ポイント減少した。春先の新型コロナの感染拡大によって、企業の選考が遅れたほか、採用縮小や中止により、学生が急きょ進路の変更を余儀なくされたケースも少なくない。

こうした学生のニーズに応えようと、リクルートキャリアは21の大学に対して、まだ内定のない学生に募集中の企業を紹介するサービスを始めた。学生はあらかじめ同サービスに登録するとキャリアアドバイザーのカウンセリングを受けられる。その内容を基に数百社から学生一人ひとりにあった会社が紹介されるという。

導入した大学の一つ、青山学院大では例年は減少に転じる7~8月の相談件数は昨年比で2~3倍に増加したという。進路・就職センターの祖父江健一部長は「努力しても内定までたどり着けないケースが急増した。学生が抱える不安や悩みが多様化していることに危機感を感じた」と話す。大学の専任職員と外部のカウンセラーの両方の指導により、未内定の学生を後押ししたい考えだ。

これまで自前で学生に対しサービスを提供してきた大学側が、民間の紹介サービスを取り入れるのは異例とも言える。それだけ今年の学生の支援が難しくなっているといえる。

企業が有望な学生を指名する「スカウト」サービスもこうした学生や企業の受け皿になっている。グローアップ(東京・新宿)が運営する「キミスカ」では、9月に入ってからサービスにログインする21年卒学生の人数が前年同時期の4.6倍に達した。利用企業数も昨年の2倍になった。就活の終盤戦とは思えない盛況ぶりだ。

マイナビが6月に実施した企業向け調査によると、1人も採用が決まっていない企業は37%と前年同期比で9ポイントも増えた。「学生を紹介してほしいという中堅・中小企業からの問い合わせがいまだに多い」(都内私大のキャリアセンター)との声も聞かれる。

コロナ禍によって10月までに学生も企業も決着をつけるというこれまでの横並びの慣習は崩れた。節目なき新常態の中、混沌とした状態はしばらく続きそうだ。

(企業報道部 鈴木洋介)

[日経産業新聞 2020年9月30日付]

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