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東大寺境内本坊にて乾杯(東大寺学園提供、過去の開催風景、写真は一部加工しています)

東大寺境内本坊にて乾杯(東大寺学園提供、過去の開催風景、写真は一部加工しています)

奈良県有数の超進学校である東大寺学園中・高等学校(奈良市)。設立の経緯そのものが地域に密着しており、保護者や地域住民も巻き込んで皆に育ててもらった学校、というイメージが強い。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が訪ねた。

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1986年までは東大寺の境内に校舎があった

奈良県の東大寺学園中・高等学校は、たとえば2020年には、東大に36人、京大に60人、国公立大医学部に58人もの合格者を出している日本屈指の進学校だ。現在は高の原の山の上にあるが、1986年までは大仏で有名な東大寺の境内にあった。

いまでも年に1回、東大寺境内で行われる学校行事がある。「父親を中心とする会」である。要するに東大寺の中で、東大寺学園の生徒の父親たちと先生が集まって酒を酌み交わす交流会である(2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止)。

「おやじの会」などと銘打ち、父親同士が交流する会はさまざまな学校で設けられているが、世界遺産の中での大宴会というのはほかに聞いたことがない。1時間ほど境内を参観したあとに、本坊で宴会が開かれる。教員20人を含む168人が定員。毎年定員を超える人数の応募があり、抽選となる。

教員がスピーチで、「学校説明会では東大寺学園がまるで夢の学園かのように感じられたかもしれませんが、まんまとだまされましたね!」とうそぶくと、会場はドッカーンと笑いに包まれる。

仕事の話や世の中の話が話題になることが多いが、子どもの勉強のことばかり気になっている父親には、教員が「親がそんなことばかり気にしていたら子どもの逃げ場がなくなりますよ。自分の中高生のころを思い出してください。いつも勉強していたわけではないでしょう」とたしなめることもある。

約2時間の宴会中、教頭からユーモアたっぷりの教員紹介や父親たちの有志団体の紹介があるくらいで、何か特別なことをするわけではないが、普段とは違う距離感で保護者と教員が交わることで、お互いに親近感が湧き、学校内で何かトラブルがあった場合にも、対応がスムーズになると本郷泰弘教頭は言う。

1977年に「父親懇親会」が開かれたのが始まり。当時PTAといえば母親が中心になりがちで、父親が学校に関わる機会が少なかった。せっかく男子校なのだから父親同士も横でつながったほうがいいだろうという狙いだった。平成に入ったころには参加者が減り、開催されなかった時期もあったが、97年に「父親を中心とする会」の名称で復活した。

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