飲酒の頻度と乳がんリスクに関係が見られなかった理由は?
飲酒頻度が高いほど乳がんリスクも高くなる現象が見られなかったことについて、著者らは以下のように考察しています。
「これまでに行われた、飲酒と乳がんリスクの関係について検討した研究では、アルコールの摂取が女性ホルモンであるエストロゲンの濃度を上昇させること、エストロゲンが乳がんの発症に関係すること、また、飲酒のパターンのうち、大量飲酒によるエストロゲン濃度の上昇が大きいことが示されている。今回対象となった女性の飲酒量については、特に週1回未満の人々においてデータが得られなかった人の割合が高かったため、分析できなかった。飲酒の頻度が週1回未満の女性が、頻度は少ないものの、1回で大量のアルコールを摂取していたと考えれば、他のグループよりもリスク上昇が大きかったことを説明できる可能性がある」
論文は、Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2020年6月1日号に掲載されています[注2]。
[注2]Sinnadurai S, et al. Asian Pac J Cancer Prev. 2020 Jun 1;21(6):1701-1707.
[日経Gooday2020年8月4日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
