2020/9/29

キャリアをつくる戦略読書

全社コストダウンの議論をどう進める?

たとえば全社コストダウンの議論をしているとしましょう。

「うちの電力利用効率は他社の2倍だ!」と誇らしげに叫ぶ役員がいるかもしれません。でも、そのビジネスの全コストのうち、電気代の「重み」はどうなのでしょう。もし全コストの1%しか占めないとしたらそれはあまり、ダイジではありません。冷たい言い方ですが、ダイジでないなら、どうでもいいのです。

ダイジかそうでないかを見極めよ

全体の1%の部分で電力効率が2倍であろうが3倍であろうが、いや、たとえ10倍であろうがコスト全体にとってほとんどインパクトはありません。

「うちの部品調達コストは他社より1割安い」としましょう。たった1割です。でも、そのビジネスの全コストのうち、部品代の占める「重み」はどうでしょう。もし6割あるとしたら、それはとてもダイジです。「差」が1割でも、結果的に、敵に6ポイント(6割の1割だから)のコスト差をつけられるのですから。もし2割なら12ポイントです。それなら部品コストを徹底的に調べ議論する価値は十分にあるでしょう。

重要思考で伝えればヒトは動く

議論もそうですが、大体話はすれ違います。自分が言いたいことを言っているだけだからです。もし本当に相手にちゃんと伝えたいなら、そして何か行動を起こしてほしいなら、なぜその行動がダイジなのかをまずは相手に伝えましょう。

「至急書類を提出せよ」ではなく、まずはなぜその書類が大切かを簡潔に、明瞭に。これらができるようになれば、組織内のコミュニケーションや意思決定効率は格段に上がります。何よりちゃんと決まるようになります。

それは高速試行錯誤の時代を生きる企業にとって、そしてそこでキャリアを築くみなさんにとって必須の基礎能力なのです。

※参考図書:『戦略思考ワークブック』(ちくま新書)

三谷宏治
 KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授。
 1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半経営戦略コンサルタントとして活躍。92年INSEADでMBA修了。2006年から教育分野に活動の舞台を移し、年間1万人以上に授業・講演。無類の本好きとして知られる。著書に『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『新しい経営学』など。『お手伝い至上主義!』『戦略子育て』など戦略視点での家庭教育書も。早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学で客員教授、放課後NPOアフタースクール・認定NPO 3keysで理事を務める。永平寺ふるさと大使、3人娘の父。

戦略読書 〔増補版〕 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 三谷 宏治
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,100円 (税込み)

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