在宅勤務認めない企業は人材の獲得難しく
――これからは在宅勤務と出社を、どのように組み合わせるパターンが広がりそうでしょうか。
「在宅勤務へのシフトとともに忘れてはならないのは、週1~2日程度の出社を望む社員も少なくないということです。『上司や同僚とのコミュニケーションがとりづらい』『オンとオフの切り替えが難しい』などの課題を抱える人も多く、フルリモートを実施していく企業は一部の企業に限定されるとみています。オフィスでの勤務も最小限は必要であると考える人が多いため、今後は在宅勤務とオフィス勤務との『ハイブリッドワーク』が主流になっていくでしょう。働く側の満足度や生産性を考えると、『週4日在宅+週1出社』『週3在宅+週2出社』といった組み合わせが多くなるのではないでしょうか」

――転職先選びの基準に関する回答をみても、「働きやすい制度があるか(在宅勤務・リモートワークなど)」を重視する層が大幅に増えたほか、「副業が可能か」に着目する層も広がっています。柔軟な働き方を提供できない企業は優秀な人材を集められなくなりますか。
「多様な働き方の選択肢を用意できない企業は、優秀な人材の獲得が難しくなります。在宅勤務、副業、兼業などの制度を導入できない企業に転職を希望するビジネスパーソンは、顕著に少なくなっていくでしょう。なぜなら、1つの組織にキャリアを預けることはリスクであると、コロナ・ショックを通じて、皆が学んだからです」
「変化に弱い企業は市場に淘汰されます。新卒採用においても、同様の傾向がみられます。就活生は第一に、エントリーする企業の働き方の柔軟性をみています。今や年収よりも重視される傾向があるほどです。副業や兼業ができる職場であれば、副収入が見込めます。様々な経験ができることは自らのキャリア開発につながり、かつ、リスクに強い働き方だと思います」
――在宅勤務可能な企業への転職希望者が増える一方、該当する求人案件数はそれほど増えておらず、転職する側からすると「狭き門」になっています。在宅勤務可能な企業への転職を目指すうえで、アピールできる経験や資質とは何ですか。
「社会変化、市場変化、企業変化に適合できる『アダプタビリティー』の高い人が求められています。変化の時代にあっては、自分らしく働く独自性を大切にしながらも、変化に適応する柔軟性が欠かせません。在宅勤務では結果や成果が重視される傾向にあります。自らニーズを発見し、仕事を生み出し、成果を出し続けるために、変化していく人が求められています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)リテラシーも欠かせません。例えば、クライアントごとにオンラインビデオ会議の手法も変わりますが、基礎リテラシーとして使いこなす必要があります」
「在宅での勤務が主となる企業への転職では、『組織内キャリア』から『自律型キャリア』への脱皮が求められます。自ら課題を見つけ出し、アプローチを決め、問題解決やアウトプットまで展開できるという、個人レベルでの実行力が必須となります。ただ、勘違いしてはいけないのは、ビジネスは個人競技ではなく、集団競技であるということ。これまで以上に電子メールやオンライン会議、チャットなどのネットインフラを使いこなしていくことが必要になります。同時に、職場での対面コミュニケーションがとれない分、より高度のコミュニケーション力が求められます」