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金星の雲の中に「生命」の可能性 世界の科学者が検証

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ナショナルジオグラフィック日本版

金星を取り巻く雲の中に、ホスフィン(リン化水素)が含まれていることが明らかとなり、生命の存在を示す証拠ではとの議論が持ち上がっている。2020年9月14日付の学術誌「ネイチャーアストロノミー」に、論文が掲載された。

ホスフィンは、生命にとって死に至る有毒ガスであるにもかかわらず、地球のような岩石惑星においては人間や微生物など生命からしか生成されないと考えられている。第1次世界大戦中に化学兵器として使用されたことがあり、現在も農業や半導体産業で使われている。自然界では、ごみ埋め立て地や湿地、さらには動物の消化管など、酸素の少ない環境にすむ一部の嫌気性細菌によっても生成される。

硫化物を食べる生命か

太陽系の第2惑星である金星は、長らく地球の双子と考えられてきた。大きさは地球とほぼ同じで、似たような重力と構造を持つ岩石惑星だ。人類は数百年前から、金星にも海があり、緑が生い茂り、豊かな生態系が栄え、生命にとって地球に次ぐ第2のオアシスとなりうるのではと期待してきた。

ところが科学が発達すると、実際には地球上の生物にとって金星は危険で非情な世界であることが明らかになった。表面温度は摂氏480度にも達し、表面気圧は分厚い大気に圧迫されて地球の90倍以上もある。大気のほとんどは二酸化炭素(CO2)から成り、硫酸を含んだ雲がこの星全体を覆っている。

それでも、金星の表面でなく、気候が穏やかな雲の中なら生命が存在できるのではという考えは、60年近く前からあった。1967年、カール・セーガンとハロルド・モロウィッツは「金星の表面環境に生命が存在するとの仮説は非現実的だが、金星の雲となると話は全く別だ」と、科学誌「ネイチャー」に寄稿している。

金星の雲には生命の基本材料が含まれており、雲の中間層の気温と気圧は地球によく似ている。「半袖で過ごせる気候ですし、おいしい食べ物もたくさんあります」と、米ウェスリアン大学の惑星科学者マーサ・ギルモア氏は解説する。

過去の観測から、金星の大気には思いのほか多くの紫外線を吸収している部分があることが明らかになっている。これは硫黄化合物による現象である可能性が高いが、それでも一握りの科学者は、雲の中に生命が存在する可能性を追求している。

たとえば微生物が硫黄化合物を代謝して、いつまでも消えることのない雲の中を漂い、高度の変化によって休眠したり目覚めたりするライフサイクルを形成しているのではと考えているのだ。

1990年代半ばからこのシナリオを支持してきた米惑星科学研究所のデビッド・グリンスプーン氏は「初めの頃は多くの抵抗に遭いました。これほど強い酸性の環境で、生命が存在できるはずはないと考えられていたからです」と話す。

だが最近では、この地球上でもあらゆる隙間に生物が暮らしていることがわかり始めている。高熱の温泉や火山といった極限環境でも微生物は繁栄し、雲の粒子の中やカリブ海の上空を浮遊する有機体まで発見されている。地球の雲は、現れてはすぐに消えるはかない存在のため、恒常的な生態系を支えるのは難しいが、金星では雲に覆われた日が何百万年以上も続いている。

今でこそ灼熱(しゃくねつ)の世界となった金星だが、かつては液体の海が広がっていたことが、これまでの観測から示唆されている。またその頃は、地球のような居住可能な環境が長い間続いていたとも考えられている。ところが、過去10億年の間に二酸化炭素が急速に増え、金星をオアシスから死の星へと変貌させてしまった。地表にすむことができなくなった一部の生物たちが、絶滅を回避するために雲の中へと移住したのだろうか。

生命が作り出す有毒ガス

2017年6月、英カーディフ大学のジェーン・グリーブス氏とその研究チームは、ハワイのマウナケア山頂にあるジェームス・クラーク・マクスウェル電波望遠鏡を使って、生物由来の可能性があるガスまたは分子を探していたところ、金星のホスフィンを検出した。ホスフィンは、3個の水素原子が1個のリン原子に結合して、ピラミッドのような形を成している。

そこでグリーブス氏は、マサチューセッツ工科大学の博士研究員クララ・ソウサ・シルバ氏に連絡を取った。今回の論文の共著者でもあるソウサ・シルバ氏は、ホスフィンが地球外生命存在の証拠となりうるかどうかを大学院で研究していた。そして、地球上で酸素を必要とする全ての生命にとって死に至る有毒ガスであるにもかかわらず、ホスフィンは生命存在を示す証拠のひとつとなるという結論に達していた。

2019年、グリーブス氏とソウサ・シルバ氏らは、ハワイの望遠鏡よりもさらに精度の高いチリの高地にあるアルマ望遠鏡を使って、ハワイでの観測結果を検証した。数十台のパラボラアンテナから成るアルマ望遠鏡はハワイの望遠鏡と同じく、電波をとらえて天体を観測する。もし金星の大気のなかにホスフィンが渦巻いていれば、それが放出・吸収するエネルギーを検出することができる。

すると、ここでもやはりホスフィンは検出された。今回は、シグナルの検出を金星の赤道付近の高度52~60キロの位置にまで絞り込んだ。この付近の気温と気圧は、地球の生命にとって厳しすぎる環境というわけではない。シグナルの強さを基に、チームは金星のホスフィンの濃度をおよそ20PPB(PPBは10億分の1)と計算した。地球上のホスフィンの少なくとも1000倍はある。

何ものかが補充し続けている

太陽系の中では、巨大ガス惑星である木星と土星の内部でもホスフィンは作られている。木星と土星の中心核付近で、激しい温度と圧力によって生成されたホスフィンは、大気を通って上昇する。しかし、岩石惑星ではそこまで環境が厳しくないため、生命なくしてホスフィンを作る方法は知られていない。だが、ホスフィンを検出した金星の観測が正しければ、何かが金星の大気にホスフィンを補充し続けているはずだ。

ドイツ、ベルリン工科大学の宇宙生物学者デューク・シュルツ・マクー氏は、金星のホスフィンは生命によって作り出されたものという説明には納得するが、その他未知の地質学的な理由か、あるいは光による化学反応という可能性も捨てきれないと指摘する。「金星については、まだわかっていないことが多すぎます」

研究チームは、生命が存在しなくても金星でホスフィンが作られる可能性について検討してみた。火山の噴出ガス、激しい落雷、地殻プレートの衝突、ビスマス(蒼鉛)の雨、宇宙塵(じん)など、様々なシナリオで計算した結果、そのいずれも観測されたほど大量のホスフィンを作り出すことはできなかった。

「生命であろうとなかろうと、実に珍しいメカニズムであることは確かです。何かおかしなことが起こっているようです」と、ソウサ・シルバ氏は言う。

一方、アルマ観測所の科学者ジョン・カーペンター氏は、ホスフィンの観測結果自体に慎重な姿勢を示している。望遠鏡がとらえたデータからごく微弱なシグナルを取り出すためには、膨大な処理作業が必要だった。その処理によって、ホスフィンと同じ周波数の人工的なシグナルが取り出されてしまった可能性がある。また、はるか遠方の分子を識別するには、複数の痕跡を探し出すのが標準的なやり方だというが、今回の研究に関してはそこまで行われていない。

ソウサ・シルバ氏もその点は認めている。実際、別の望遠鏡を使った追加観測も予定されていたが、今のところ新型コロナウイルスの影響で計画は中断されたままだ。

(文 NADIA DRAKE、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年9月16日付]

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