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表面の白い粉のようなものは農薬やカビではなく、果皮を保護する成分=PIXTA

子どもの数では負けているが、まだまだ巨峰強し!といったところか。ただ、シャインマスカットの登場がブドウの栽培者にも一般消費者にも大きな変化を与えたことは間違いない。

「種がなく皮ごと食べられるシャインマスカットやナガノパープルの衝撃は大変大きく、その後登場している品種も、多くがシャインマスカットの系統になっていて、『おやつのように食べるブドウ』というこれまでにない分野を作ったと思います。小さい子供たちが進んでブドウを食べるのも、シャインマスカットの功績かなと思います」と八尾さん。

昨今は果物離れが進んでいると言われている。その理由は「皮をむくのが面倒くさい」「手が汚れる」といったもの。「皮が薄く、そのまま食べられて手が汚れない」「種を出さなくていい」、この2点によりシャインマスカットは今まで果物を敬遠していた層にまでマーケットを広げたといえよう。

最近では巨峰までもが「種なし」になっている。私がスーパーの果物売り場を見た限りではむしろ種なしが主流になっているようにさえ思う。この種なしは交配ではなく、栽培の過程で施される処理によって生産される。

「最初に種なしブドウとして登場したのはデラウェアです。そもそも種なしブドウを作ろうとしたのではなく、デラウェアの裂果防止のためにホルモン処理をしたところ、種なしが実りました。このホルモン剤のジベレリンも日本の研究者がイネの研究過程から発見された成分です。この技術をもとに全国に種なし栽培の技術が広がり、日本は種なしブドウ大国となりました」(八尾さん)

おいしいブドウの見分け方や食べ方についても聞いてみた。

「ブルームと呼ばれる白い粉のようなものが、まんべんなくブドウの表目に表れているもの、これがおいしいかを見分けるポイントです。農薬やカビと勘違いする方もいらっしゃるようですが、これは植物が自ら作り出す果皮を保護する成分。果実の熟度が高まったことと、鮮度の良さを表すものです。冷やしすぎると風味を感じにくくなるので、野菜室で15分くらい冷やして召し上がってください」(八尾さん)

ブルームは収穫から時間がたつと少なくなり、ツヤツヤになるそうなので、白っぽいものを選ぶべし。シャインマスカットは樹上完熟すると黄緑から黄色になるそうで、産地で買う機会があれば、その日に収穫した黄色いものを選ぶといいそう。

また、八尾さんは「青果関係者としては『皮を食べられない種ありブドウ』を改めて召し上がってほしい」とも。「種の周りの苦みや渋みなどが甘味・酸味と相まって深みを生み出しますし、皮のつるりと取れる感覚や、皮を指でむく手間暇も、その果物の特徴として楽しんでほしいです」

シャルドネなどの白ワインには発酵バターのような香りがするものがある。それはオイルを含む種の部分から来ていると聞いた。種の部分に風味やおいしさがあるのは大いに納得できる。今度、家系図を見ながら、じっくり皮厚・種ありブドウを味わってみることとしよう。

(ライター 辻佳苗)


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