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ブドウを「家系図」で読み解く 老舗品種と新興の戦い

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NIKKEI STYLE

秋に旬を迎える「ブドウ」。よりおいしいものを求めて盛んに改良が行われ、新品種が続々と生まれている。今年はどんな品種が登場するのかと楽しみにしている人も多いかもしれない。2~3年前には、市場に出まわる100種類以上の生食用(ワインや干しブドウなどの加工用ではない)ブドウの品種がどのようなつながりで生まれたかがわかる「葡萄の家系図」なるものがなるものがツイッター上で「ものすごい情報量!」「作った人の情熱を感じる!」と話題になった。

家系図を見ていると、人気品種の勢力図がよく分かる。例えば、誰もが知る高級品「巨峰」を追い越す勢いで、新興の「シャインマスカット」の勢力が拡大しているのが見てとれる。今回は「葡萄の家系図」をもとに人気の品種やその秘密をひもといてみよう。また、おいしいブドウの見分け方・食べ方などについても紹介する。

果樹の新しい品種は主に2つの方法によって生み出される。1つは2つの異なった品種を交配させて作り出すもの。もう1つはある品種が育つ過程で、特定の枝だけ変わった実を生らせる箇所があり、その枝を接ぎ木して増やしたもの。こうして品種として安定させたものを「枝変わり」という。

「葡萄の家系図」では、交配させた品種同士はピンクの線で、枝変わりしたものは緑の線で表示してある。また、ブドウは果皮の色によって「黒ブドウ」「赤ブドウ」「緑(白)ブドウ」の3種類に分けられる。これら3種類と「不明」のものの4種類が色別に示してある。つまり、ある特定の品種がどんな色で、どの品種の交配、あるいは枝変わりから生まれたものかが一目瞭然でわかるしくみである。

これを眺めていると、まるで戦国武将の家系図のようにも思えてくる。たとえば、巨峰を見てみると、かっこ付きで(石原センテニアル)と書いてある。実はこれが巨峰の正式な品種名。「石原早生(わせ)」と「センテニアル」という2つの品種を交配させたもので、巨峰は商品名なのだそう。戦国武将が幼名や本名など複数の名前を持っていたのに似ていなくもない。

家系図によると、巨峰は6品種と交配し、そこから6の、枝変わりを入れると合計10の新品種が生まれたとされる(あくまでも家系図に載っている、市場に出回っている品種の話で、実際にはもっと生まれているかもしれないが)。ブドウの育種家は「この品種を交配させたらおいしいものができる」と考えて交配させる。子ども(新品種)の多さはおいしいブドウ、人気のブドウである証ともいえるだろう。

これも側室を複数持ち、子どもをたくさん残すことが御家安泰につながった戦国武将のようでもある。ちなみに巨峰と側室の一人、赤ブドウの「リザマート」との間に生まれたのが、今大人気の「ナガノパープル」である。

巨峰一族は子どもとその子たちを含めるとかなりの数になり、ブドウ界の中でも一大勢力といっていいだろう。巨峰はその粒の大きさ、強い甘みから「ブドウの王様」と称される。家系図から見ても王様、将軍なのである。

だが、子どもの数としては、巨峰はナンバーワンではない。家系図によれば、ブドウ界で一番の子だくさんはシャインマスカット。9品種との交配で15品種の子どもを生している。

こちらは「安芸津21号」と「白南」から生まれた緑ブドウ。大粒で強い甘みと香りがあり、種がなく皮か薄くそのまま食べられることから近年、爆発的人気になっている。

「安芸津21号」は緑ブドウの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と黒ブドウの「スチューベン」の交配から生まれたものだったのだ。

マスカット・オブ・アレキサンドリアはエジプトが原産で、クレオパトラが好んで食べたとの逸話や、気品ある芳醇(ほうじゅん)な香りから「ブドウの女王」と呼ばれている。つまり、シャインマスカットは「女王の孫」というわけである。

つまり、ブドウの勢力争いは現在、「ブドウの王様」vs「女王の孫」となっているように思われる。では、実際のところはどうなのか。この家系図を作製した、旬の食材の通販サイト「豊洲市場ドットコム」に人気品種の変遷とマーケットでの実態について聞いてみた。

「1980年代は小粒の赤系ブドウ『デラウェア』が最も生産量が高かったのですが、徐々に大粒嗜好になり、巨峰やピオーネが市場をけん引しました。シャインマスカットの登場は2000年代になってからで急激に普及が進んでいる状況です。栽培面積では、2017年の農林水産省の統計で巨峰、ピオーネ、デラウェアに続いてシャインマスカットの順です。シャインマスカットは人気やそのまま食べられるお手軽さで目立つ存在ですが、日本人には長らく親しんできた黒系ブドウがまだ人気がありますね」(「豊洲市場ドットコム」の運営会社・食文化のシニア産地プロデューサーの八尾昌輝さん)

子どもの数では負けているが、まだまだ巨峰強し!といったところか。ただ、シャインマスカットの登場がブドウの栽培者にも一般消費者にも大きな変化を与えたことは間違いない。

「種がなく皮ごと食べられるシャインマスカットやナガノパープルの衝撃は大変大きく、その後登場している品種も、多くがシャインマスカットの系統になっていて、『おやつのように食べるブドウ』というこれまでにない分野を作ったと思います。小さい子供たちが進んでブドウを食べるのも、シャインマスカットの功績かなと思います」と八尾さん。

昨今は果物離れが進んでいると言われている。その理由は「皮をむくのが面倒くさい」「手が汚れる」といったもの。「皮が薄く、そのまま食べられて手が汚れない」「種を出さなくていい」、この2点によりシャインマスカットは今まで果物を敬遠していた層にまでマーケットを広げたといえよう。

最近では巨峰までもが「種なし」になっている。私がスーパーの果物売り場を見た限りではむしろ種なしが主流になっているようにさえ思う。この種なしは交配ではなく、栽培の過程で施される処理によって生産される。

「最初に種なしブドウとして登場したのはデラウェアです。そもそも種なしブドウを作ろうとしたのではなく、デラウェアの裂果防止のためにホルモン処理をしたところ、種なしが実りました。このホルモン剤のジベレリンも日本の研究者がイネの研究過程から発見された成分です。この技術をもとに全国に種なし栽培の技術が広がり、日本は種なしブドウ大国となりました」(八尾さん)

おいしいブドウの見分け方や食べ方についても聞いてみた。

「ブルームと呼ばれる白い粉のようなものが、まんべんなくブドウの表目に表れているもの、これがおいしいかを見分けるポイントです。農薬やカビと勘違いする方もいらっしゃるようですが、これは植物が自ら作り出す果皮を保護する成分。果実の熟度が高まったことと、鮮度の良さを表すものです。冷やしすぎると風味を感じにくくなるので、野菜室で15分くらい冷やして召し上がってください」(八尾さん)

ブルームは収穫から時間がたつと少なくなり、ツヤツヤになるそうなので、白っぽいものを選ぶべし。シャインマスカットは樹上完熟すると黄緑から黄色になるそうで、産地で買う機会があれば、その日に収穫した黄色いものを選ぶといいそう。

また、八尾さんは「青果関係者としては『皮を食べられない種ありブドウ』を改めて召し上がってほしい」とも。「種の周りの苦みや渋みなどが甘味・酸味と相まって深みを生み出しますし、皮のつるりと取れる感覚や、皮を指でむく手間暇も、その果物の特徴として楽しんでほしいです」

シャルドネなどの白ワインには発酵バターのような香りがするものがある。それはオイルを含む種の部分から来ていると聞いた。種の部分に風味やおいしさがあるのは大いに納得できる。今度、家系図を見ながら、じっくり皮厚・種ありブドウを味わってみることとしよう。

(ライター 辻佳苗)

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