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かつては種なしのデラウェアが日本のブドウの主流であった=PIXTA

家系図によると、巨峰は6品種と交配し、そこから6の、枝変わりを入れると合計10の新品種が生まれたとされる(あくまでも家系図に載っている、市場に出回っている品種の話で、実際にはもっと生まれているかもしれないが)。ブドウの育種家は「この品種を交配させたらおいしいものができる」と考えて交配させる。子ども(新品種)の多さはおいしいブドウ、人気のブドウである証ともいえるだろう。

これも側室を複数持ち、子どもをたくさん残すことが御家安泰につながった戦国武将のようでもある。ちなみに巨峰と側室の一人、赤ブドウの「リザマート」との間に生まれたのが、今大人気の「ナガノパープル」である。

巨峰一族は子どもとその子たちを含めるとかなりの数になり、ブドウ界の中でも一大勢力といっていいだろう。巨峰はその粒の大きさ、強い甘みから「ブドウの王様」と称される。家系図から見ても王様、将軍なのである。

だが、子どもの数としては、巨峰はナンバーワンではない。家系図によれば、ブドウ界で一番の子だくさんはシャインマスカット。9品種との交配で15品種の子どもを生している。

こちらは「安芸津21号」と「白南」から生まれた緑ブドウ。大粒で強い甘みと香りがあり、種がなく皮か薄くそのまま食べられることから近年、爆発的人気になっている。

「安芸津21号」は緑ブドウの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と黒ブドウの「スチューベン」の交配から生まれたものだったのだ。

マスカット・オブ・アレキサンドリアはエジプトが原産で、クレオパトラが好んで食べたとの逸話や、気品ある芳醇(ほうじゅん)な香りから「ブドウの女王」と呼ばれている。つまり、シャインマスカットは「女王の孫」というわけである。

つまり、ブドウの勢力争いは現在、「ブドウの王様」vs「女王の孫」となっているように思われる。では、実際のところはどうなのか。この家系図を作製した、旬の食材の通販サイト「豊洲市場ドットコム」に人気品種の変遷とマーケットでの実態について聞いてみた。

「1980年代は小粒の赤系ブドウ『デラウェア』が最も生産量が高かったのですが、徐々に大粒嗜好になり、巨峰やピオーネが市場をけん引しました。シャインマスカットの登場は2000年代になってからで急激に普及が進んでいる状況です。栽培面積では、2017年の農林水産省の統計で巨峰、ピオーネ、デラウェアに続いてシャインマスカットの順です。シャインマスカットは人気やそのまま食べられるお手軽さで目立つ存在ですが、日本人には長らく親しんできた黒系ブドウがまだ人気がありますね」(「豊洲市場ドットコム」の運営会社・食文化のシニア産地プロデューサーの八尾昌輝さん)

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