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海外でも日本酒普及、プロ育成 東京の柴田屋酒店

世界で急増!日本酒LOVE(25)

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1935年創業の柴田屋酒店(東京・中野)はユニークな事業者だ。首都圏2500軒以上の飲食店などに酒類を卸す一方、日本酒の海外輸出事業も推進し、国内外で日本酒の啓蒙・教育にも注力している。2015年には国内外で日本酒を広めるために、認証資格「サケ・エキスパート」を付与する一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを結成、国内だけでなく海外でもセミナーを開講し、世界中で現在約600人のサケ・エキスパートを輩出している。

同社は2005年に"接客こそが飲食店の発展のカギを握る"と、酒類関係者や飲食店の仲間とNPO法人「繁盛店への道」を結成。以来、飲食店の接客コンテスト「S1サーバーグランプリ」を毎年開催しており、飲食業界に"ホスピタリティ接客"の新潮流を巻き起こしたことでも知られる。

日本酒に関しては2012年からワイン・ビールに次ぐ第3の柱として販売を強化してきた。ジャパン・サケ・アソシエーションの結成もその一環で、現在は国内のほかイタリア、タイ、ブラジル、中国、台湾などでもセミナーを開講する。

「日本の外食は、これから海外にバンバン出て行くだろうし、そういう店(企業)にみんな就職したいと思う。これからはグローバルな外食企業が生き残るのではと思い、飲食企業と海外の架け橋になりたいと世界へ進出しました」と話すのは、同社・三代目であり、代表取締役の柴泰宏氏だ。

2013年にまずタイのバンコクに進出し、2015年にはイタリア・ミラノに進出し、欧州全土への日本酒の販売ネットワーク網を広げている。さらに2018年には韓国・ソウルや米国ニューヨークにも進出、現在この4カ国を拠点に日本酒を輸出する。(コロナ禍で現在、各国の動きは鈍化している)。

ソムリエでもある柴氏は、ワインの輸入も手がけており、イタリアへは以前から頻繁に訪れていた。「イタリアにはドイツやフランスから温度管理されていない日本酒が入ってきていて、品質が劣化した日本酒が出回っていた。それで酒屋魂に火がついたんです。日本酒はもっとおいしいはずなのにと」。2015年のミラノ万博を機に輸出を本格スタートさせた。

いま輸出先で一番好調なのは韓国という。日韓問題で、日本製品の非売運動などが起き、短期的にはマイナスの影響が出たが、近年は和食店の増加もあり、現地のマーケットシェアが拡大。熱心な韓国人スタッフたち(現在3名)が日本での営業ノウハウを現地でも採り入れ、徹底させたことがその要因になっている。

「我々は日本でお酒を飲食店に配達しながら、同時にセールスもしています。新商品のご案内はもちろん、作り手や製法の特徴も伝えようとしている。韓国のスタッフにも日本の蔵に足を運んでもらい、"この酒のこの点が魅力ですよ!"と言えるよう準備してもらっています。それぞれの店の料理に合うペアリングを提案することもあり、こうした地道な営業努力が奏功しているのだと思います」と柴氏は分析する。

タイ・イタリア・韓国に進出してみて、柴氏は分かったことがあるという。それは海外で成功するためには「現地にある程度、日本人や和食店が多く、そこそこ先進国でないと厳しい」ということ。その観点でマーケットとして有望なのが米国で、欧州全体のマーケットの約20倍とも言われる米国市場に、かなり気合いを入れて戦略的に進出した。

海外に輸出された日本酒は一般的に、先に蔵元と契約した現地の1社だけが取り扱いを許されるという。米国でも複数企業が1つの銘柄を現地で流通させられるわけではない。同社のような後発企業は、有名銘柄などをなかなか扱えない。

「売れそうな有名銘柄の販売権を先に獲得した方が酒屋としては勝ちやすい。だが我々は後発組。ブランド勝負でない別の営業活動をしないと生き残れない」と柴氏は考えた。

日本人の間であまり知られていない日本酒であっても、若手醸造家の独自の考え方が魅力的だったり、注目に値するものであれば、現地で評判を獲得できることを韓国進出で学んだ。「知恵を絞れば道は開ける」と考えた柴氏は、米国でも独自の手法を考案。そこで生まれたのが、同社オリジナルの日本酒「HAPPI」(ハッピー)シリーズだった。

「銘柄のブランド力に頼らずに戦うため、タイプ別の日本酒を自分たちで作るしかないと考えました。サケ・エキスパートの海外講習などでもお伝えしているタイプ別日本酒は、外国人にとっても分かりやすいんです。お肉に合う酒(ブッチャー)、お魚に合う酒(フィッシャーズ)、華やかなフルーティー…など、料理やシーンによって選べる6種の酒シリーズがそれです」と柴氏。

日本酒のボトルは720ミリリットル入りが一般的だが、日本酒を飲み慣れていない外国人でも気軽に購入できるように、500ミリリットルサイズ1本に絞り込んだ。当初は米国の若い女性向けに開発したものだったが、コロナ禍の影響もあり、現在は米国以外の国や日本での販売を決定したところだ。

「HAPPI」シリーズは他の日本酒とはちょっと違う雰囲気を演出するため、ラベルもオリジナルにした。20代の米国人女性デザイナーが手がけたもので、見た目はワインボトルのようでもある。新しいコンセプトの商品に、国内で製造を担当する蔵元たちも期待を寄せる。

「各国で現地の人々の声に耳を傾け、商品開発もする。酒のブランド力だけに頼るのではなく、酒屋として自分たちの知恵や独自の営業手法でサービスやビジネスを成功させることが重要だと思っています」と柴氏。そうすることで自分たちはもっと強くなれると確信しており、今後はイタリアでの現地醸造も目指す方針だ。

同社は2019年、国内で「その他の醸造酒製造免許」を取得した(清酒醸造免許はこれから)。すでにどぶろくの醸造試作をスタートしており、そのスキームをイタリアに持ち込み、現地で醸造する計画という。

どの国でも一般消費者はいきなり高級酒にはトライしにくい。価格面でもホップ→ステップ→ジャンプという流れが必要になってくる。「イタリアで日本酒をもっと広く広めるためには現地醸造が欠かせない。例えば30ユーロ(約3700円)のマーケットしかないと、その母数は限られるが、10ユーロ(約1200円)の日本酒もあれば、一気にマーケットの裾野が広がり、市場全体が拡大する」と柴氏は指摘する。

現地醸造により割安なホップ&ステップの下層マーケットを生み出すことができれば、最終的に「"日本から輸入された本物の日本酒は高いけれど、やっぱ美味しいよね"と高級酒の価値も生まれてくるはず」というわけだ。

同社は国内のグループ企業で「ビール工房」というビール醸造所併設レストランも展開しているが、イタリアでも日本酒の醸造所の隣にビールのブリューパブも併設、という構想を抱く。「日本酒だけでは間口が狭く、投資も回収できないので、海外でも隣でビールも造って一緒に売る。ビールもワインも日本酒も造れる未来の酒屋。そこでは新鮮な生酒も飲めるし、もちろん輸入した日本酒も販売する」。そんな青写真を描く柴氏の夢は膨らむ。

同社は社員約150名のうちソムリエ資格保有者が約40名、日本酒のサケ・エキスパート資格保有者は62名。柴氏含め、ビア・テイスターなどビールの資格を持っている社員も少なくない。いわゆる酒の最強集団だ。「ワインを世界から日本へ、逆に日本酒は日本から世界へ。"人と人をSAKEで繋ぎ、世界中を笑顔にする"というのが我々の役目です」と、国内外のスタッフ一同、意欲を燃やす。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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